その昔、ヘビの脂がほとんどどの病気にも効く妙薬であると喧伝されたことがありました。それ以来、ヘビ脂は、いろいろな病気に効く万能薬の代名詞となりました。
今日、このヘビ脂式の解決法が、かつてなく流行しています。左寄りの人々も右寄りの人々も、また、その中間にいる人々も、実に多種多様な解決策を持ち出してきては、これらは、あらゆる問題を解決することのできる万能薬だと信じ込んでいるのです。
たしかに、このような解決策は、ある特定の問題解決に役立つことがあるかもしれません。しかし、もしそれがほとのどすべての問題の解決に役立つと言うならば、ペテン以外の何物でもありません。例えば、「合衆国憲法に帰れ。そうすれば問題はすべて解決する。」と主張する人々がたくさんいます。しかし、憲法は非常に控えめな文書であり、政府を維持するための方法(任期期間や、官吏や議会の種類等)を記したマニュアルでしかないのです。それは、われわれに基本法を提供してくれません。国民の資質向上を憲法に期待することは愚かです。同じことが、普通法についても言えるのです。国民の道徳性と資質を向上させるのは、信仰と、信仰に基づく生活であって、文書ではありません。
第二次世界大戦の終結後、サンフランシスコにおける国連創設は、私の記憶にあざやかですが、これは、大変心を沈ませる出来事でした。というのも、設立者たちは、国連こそ、世界の諸問題を解決するための真の手段であると信じていたからです。参加諸国の宗教的・倫理的背景は実に多種多様であり、共通の部分などほとんどありませんでした。
今日、あらゆる分野において、これほどまでにヘビ脂式の解決策がもてはやされている理由は、私たちが健全な倫理的・宗教的基盤を持っていないからにほかなりません。同時に、人々は、狂気じみた、理由のない戦いに明け暮れています。だれもが、互いを悪魔呼ばわりし、中傷合戦を繰り広げています。
ヘビ脂の専門家たちは、ものごとをすべて単純に白か黒かに分けます。彼らは、自らを悪い陰謀の犠牲者であると考えています。愚にもつかないつまらない出来事をあたかも歴史に残る大事件であるかのように吹聴しています。彼らは、自らを純粋、高潔、無私にして、聖杯を探し当てることに成功したギャラハッド[訳注:アーサー王伝説に出てくる人物。円卓の騎士の中でも最も純潔な騎士]と見なしているのです。
歴史的キリスト教が持つ正統信仰の価値は、「純粋な信仰を保ち、神を真に礼拝するには、絶えず罪を告白しなければならない。」と説く所にあります。一般祈祷書は、次のように述べています。
全能者にしてあわれみ深い父なる神よ。私たちは、迷い出た羊のように罪を犯し、あなたの道から逸れてしまいました。私たちは、自分の考えや自分の心の願いのままに歩み、あなたの聖なる律法を破りました。すべきことをせず、してはならないことをしました。ですから私たちの内には健全なところは少しもありません。しかし、主よ、あなたは、私たちのような惨めな罪人をあわれんでくださいます。神よ、そむきの罪を言いあらわす者を赦してください。私たちの主イエス・キリストにあって人間に示されたあなたの御約束にしたがって、悔い改める者を回復してください。恵み深い父よ、私たちの願いを聞き届けてください。私たちが、あなたの御名の栄光のために、今より後、忠実で正しく、きよい生活を送ることができますように。アーメン。このような告白は、私たちを謙遜にしてくれます。これは、私たちの存在についてだけではなく、私たちの行いについても言えるのです。今日、救世主きどりの人々が[万能薬を売りつけるために]巷を徘徊しています。本当の救い主はお一人だけであり、それは、わたしでもなく、あなたでもなく、他の誰でもありません。謙遜、いかがですか?
Snake-Oil Peddlers, in Chalcedon Report (No. 384, July 1997).
This article was translated by the permission of Chalcedon.