ブッシュはファンダメンタリストを自称するな
ブッシュ大統領は、プロテスタントのファンダメンタリストと自称するのをやめてほしい。
アメリカのキリスト教事情に詳しくない日本人は、
ファンダメンタリスト→聖書を文字通り信じる→カナン侵攻→侵略戦争→イラク攻撃
という単純な図式を描いてしまうからだ。
このような誤解を与えないためにも、はっきりとこの場において説明しておきたい。
(1)聖書を文字通り信じる立場は、侵略戦争を肯定するものではない
神はイスラエルの王に対して、「馬を増やしてはならない」と言われた。
「王は、自分のために決して馬を多くふやしてはならない。馬をふやすためだといって民をエジプトに帰らせてはならない。『二度とこの道を帰ってはならない。』と主はあなたがたに言われた。」(申命記17・16)
馬は、古代の戦争において攻撃的武器であった(see Yigael Yadin, The Art of Warfare in Biblical Lands (New York: McGraw-Hill Book Company, 1963), I, 86-90. cited by R. J. Rushdoony, in Institutes of BL, (P&R, 1973), p.279)。
馬を増やすな、という命令は、「軍事力を増強して他国に侵略してはならない」ということを意味している。
「神は、多くの馬を持ってはならないとお命じになった。それは、馬が増えることによって、王の気持ちが高ぶり、軽率にもエジプトに侵略するようなことのないためである。」(Calvin, John, Calvin's Commentaries: Harmony of the Law,(Albany, OR: Ages Software, Inc.) 1998.)
戦争が正当であるのは、正義のための戦いにおいてのみである。
「戦争は、正しい理由がある場合にのみ正当なものとなる。それは、通常、国土防衛と、正義の防衛のためである。それゆえ、不正義の戦いに対して、人間は、反戦を唱える良心的な自由がある。」(R. J. Rushdoony, Institutes of BL, p. 280.)
聖書を文字通り信じるならば、申命記17・16をも文字通り神の言葉として信じるわけだから、侵略戦争を肯定するはずがない。
(2)モーセ五書が記しているカナン侵攻は、侵略戦争を肯定していない。
イスラエルのカナン侵攻は、異教徒に対して侵略戦争をしかけてもよいということを述べているのではない。
それは、「カナン人の罪が満ち、彼らに死刑判決が下ったから」という理由だけである。
「あなたの神、主が、あなたの前から彼らを追い出されたとき、あなたは心の中で、『私が正しいから、主が私にこの地を得させてくださったのだ。』と言ってはならない。これらの国々が悪いために、主はあなたの前から彼らを追い出そうとしておられるのだ。あなたが彼らの地を所有することのできるのは、あなたが正しいからではなく、またあなたの心がまっすぐだからでもない。それは、これらの国々が悪いために、あなたの神、主が、あなたの前から彼らを追い出そうとしておられるのだ。また、主があなたの先祖、アブラハム、イサク、ヤコブになさった誓いを果たすためである。」(申命記9・4-5)
イスラエルは、死刑執行人として任命されただけである。
その実、他の個所において、イスラエルが他国を侵略してもよいと述べられていない。
03/03/26