吉井春人牧師の批判に答える9

 

<吉井先生>
宣教の大命令
主の宣教の大命令において、弟子達が確信すべきなのは、「世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」という確信です。ここに宣教の励みを読みとるべきです。「終末的状況が担保のように示されいるのだから、それまで私は来ない」と、未来像が弟子達の安定感や励みとされるように語られたというより、初代キリスト教徒が、ユダヤ民族以外への宣教を躊躇していたような状況下で、宣教対象には民族的差別がないことを示されたと理解するのが自然です。

<富井>
もちろん、マタイ28章18-20節の大宣教命令は、宣教の励み、宣教対象の民族的差別の撤廃とも取るべきでしょう。しかし、「すべての国民を弟子とせよ」という命令がある以上、その命令が成就するということを信じることは、文脈上きわめて論理的でしょう。我々が、もし日本の政府から「W杯開催の準備をしなさい。我々は日本において、開催に必要な権限をいっさい所有しており、いつもそばにいて助ける用意があるから」と言われたら命令を受けた人々は、「やろう。できるのだ。」と考えて励ましを受けるのは当然です。「成就するかどうかわからない。途中で歴史が終わって必ずしもすべての国民が弟子となるとは限らないけど頑張りなさい」というようなことをイエスが言ったと解釈することは明らかにイエスを無責任者とすることです。
イエスは、「私はすでに世に勝った」「あなたがたに敵はいない」と述べておられる以上、イエスの弟子を自認する人々は、勝利を確信して戦うべきでしょう。どのような戦いにおいても、励ましの基本は、「勝利の確信」です。サッカーの監督が「どうせ無理だろう」と言えば、選手の士気が沈むのは明らかです。
あらゆる悲観的考えにはサタンの誘惑がつきまといます。もし私たちが、本当に神の力を信じることができず、少しでも疑いがあるならば、その疑いの隙間からサタンは火矢を放ってきます。そして、その火矢は心のなかで燃え広がり、恐れにつきまとわれます。このような誘惑についてベテランのクリスチャンである先生は無知ではないはずです。
どのような段階においても、「弟子化が途中で終わる可能性がある。」という中途半端な姿勢は、宣教の停滞をもたらします。「もうこれくらいでいいんじゃないか。」という慢心からよいものが生まれるはずがありません。事実、そのように考えたルター派において宣教は進まなかったのです。ルター派において宣教が進んだ時期は、ポスト・ミレを採用した時期と重なります。
聖書の中心的主張は、「人間は、地を従え、地を神のために治める責任がある」とするものです。伝統的に、改革主義は、ヴァン・ティルが「歴史の目的はあらゆる場をキリスト礼拝の場と変えること」と述べたように、文化命令と大宣教命令の平行性を受け入れており、終末に至るすべての歴史的過程は、この両者の成就のために存在すると考えます。先生がよく引き合いに出される、元ウェストミンスター神学校教授であり、現リフォームド・セオロジカル・セミナリーの組織神学教授であるJohn Frame は、再建主義の働きの一つであるInstitute for Cultural Leadershipに主要スピーカーとして参加します(8月2-3日)。この案内文には、次のように記されています。
「クリスチャンは、文化的リーダーを回復しない限り、文化的リーダーシップを回復できない。クリスチャンのシンクタンクはいくつかあるが、思想だけでは文化をキリスト教のために獲得することはできない。思想は必ず実を結ぶ。しかし、思想に足はない。思想は行動に移されねばならない。この点においてクリスチャンは戸惑いを感じてきた。彼らは、『強力な思想は人間を形成するが、だからといって必ずしも彼らが文化を勝ち取れるとは限らない。』という重要な教訓を学び取ることに失敗してきた。強力な思想は人間を形成する。しかし、文化を勝ち取ることができるのはそれにふさわしく訓練された人々だけである。」
この集会のテーマの一つは、「最大包括的キリスト教」です。すなわち、「キリスト教の目的とは、単に人々に天国行きのキップを渡すだけではなく、文化そのものを変え、世界を獲得することにある」とするものです。ラッシュドゥーニーは次のように言いました。
「教会が宣べ伝える言葉は、教会にのみ限定されない。というのも、聖書は教会の言葉ではなく、神の言葉だからだ。神の言葉はあらゆるものを裁き、あらゆる人々に、生活のすべての領域について、キリストにある希望を与えるのだ。」
文化をキリストのために獲得するという再建主義の働きがなぜ、これだけの反対を受け、疑問視されるのか不思議でなりません。大宣教命令についての局所的な解釈が、聖書全体からの大局的解釈に取ってかわられるならば、人々は必ず「最大包括的キリスト教」を受け入れることになると考えます。

 

 

02/06/19

 

 

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