>扮装の下に、悪霊が働いているとは言えないでしょうか？「使徒の働き」を読みます

>と、魔術師シモンとかバルイエスというユダヤ人の魔術師が出てきますよね。（使徒

>8章、13章）　ユングなどとグノーシス主義的世界観との関連なども言われるようで

>すが、神を認めない現代心理学と魔術的なもののつながりはあるのでしょうか？

　催眠術と悪霊との関係についてはわかりません。ただ、心理学をはじめ現代科学は古代宗教に普遍的に見られる「カオスから秩序へ」というテーマを受け継いでいるということは、R・J ラッシュドゥーニーが繰り返して主張しています。「原始の世界は混沌であり、次第に秩序が形成された、その形成の主翼を担うのは、神であり、その神を現世において体現する王である。」

　事実、心理学が進化論の世界観に依拠していることを見てもこのことはわかります。

　ちなみに、新しいものは、混沌の中から生まれるとの主張は、マルクス主義の中にもある、とゲイリー・ノースは主張しています（Gary North, Marx's Religion of Revolution, ICE, TX）。つまり、古い体制を革命によって破壊する。その廃墟の中から新しいものが生まれると考えたのは「カオス…」のモチーフと同じではないか、という新しい視点から見たマルクス主義批判の論文を書きました。

　それから、神を認めないという心の背景には、必ず悪魔がいるので、現代心理学が悪魔の影響を受けていないなどということはないでしょう。

R・J ラッシュドゥーニーのFreudやRevolt against Maturity(R.J.Rushdoony, Revolt against Maturity, Ross House Books, Valecito, California)という本にはこのあたりの分析が詳しくあります。

>聖書を読みますと、神様は、幻や夢を通して、御心を啓示しておられますが、そ

>れと無意識とは関係があるのでしょうか？今日も、夢や幻を通して、御心を示される

>ことはあるのでしょうか？

　人間は、預言者として創造されていますので、そのような方法で神が何かを示されることはないとは言えないでしょう。それを否定する聖書の個所は存在しません。実際、ソ連や中国など、迫害され、聖書を奪われたクリスチャンにこのようなことが多く起こりました。

　しかし、聖書は、神が誤りなき完結された啓示として与えられたものですから、様々な預言や幻を聖書によってチェックしなければならないと思います。「霊をみな信用してはならない。」とありますから。

>日本では、クリスチャン・サイエンスとかジョセフ・マーフィーの成功哲学とし

>てそれなりに知られているようですが、アメリカのＮＥＷ　ＴＨＯＵＧＨＴ　ＲＥＬ

>ＩＧＩＯＮの系譜に属する成功哲学、積極思考、自己啓発グループも、深層意識や潜

>在意識の働きを重視するようですが、原罪は存在せず、万人がキリストの力を内包し

>ているとし、当然キリストの十字架の贖いを否定もしますので、とてもキリスト教と

>は言えないのですが、どう評価し、位置づけるものと考えられますか？積極的な考え

>方を啓発するということで神の一般的な恵みと言えるでしょうか？それとも人間の欲

>につけいる惑わすサタンの働きでしょうか？（実際、自己啓発テープとか「速聴」

>云々と言われるものは、1セットが数十万円とか数百万円しますよね。購入するかし

>なかはその人の価値観によりますが。）　正統的な教理を奉じていても、実際のとこ

>ろ、中身は、そういう成功哲学に魅力を感じ、それに動かされているクリスチャンや

>教会もあると思うのですが。

　ほとんどすべての自己開発セミナーは宗教的で何らかの霊的な影響を受けている活動であると思います。それは、ライフスペースの一件を見てもわかるのではないでしょうか。

　「人生を成功に導くものを提供する」という活動が悪魔的になるのは、サタンは一番これを餌にして人間を誘惑してくるからです。

　サタンは、「もし、わたしにひれ伏して拝むならば、全世界を与えましょう。」と言ってイエスを誘惑しました。

　エバに対しても、「あなたがこの実を食べるそのとき、あなたは神のようになれる」というのも、「成功」や「繁栄」を提供して人を堕落させようとするサタンの策略の原型でありました。

　「成功哲学」とか「自己啓発」とか「マルチ商売」とかにサタン臭があるのは、その背後にこのような「成功でつって人を堕落させようとするサタンの陰謀」があるからです。

　成功を求める心そのものは悪ではありません。

　成功を求める方法が問題なのです。

　聖書が提示するのと異なる因果律を提供することはサタンの活動になります。

　聖書が提示する主要な因果律とは、「倫理的因果律」です。つまり、「律法を守れ、そうすれば、あなたがたは成功するだろう。」と教えています。もちろん、「計画を立ててすぐれた指揮のもとに事を行え」と勧めている個所もありますから、「合理性」「秩序性」「努力」などの要素を無視しているわけではありません。しかし、聖書の中心にある因果律は、「神の契約遵守→祝福、契約違反→呪い」です。

　しかし、サタンが教える因果律とは、

（１）機械論的因果律

「自動販売機に100円を入れると、ジュースが出てくるように、人間の運命を決定するのは純粋な合理性だけである。その人の倫理性は無関係である。」とする因果律です。「努力すれば、必ず成功する。あなたがどんなに不道徳な生活をしてもかまわない。とにかく努力してできるだけ多くの人々と接触して商品を売ることです。売る際には、笑顔を忘れずに。」と教えるものなどこのグループに入ります。無神論的合理主義など、現代の世界は主にこの因果律を信じています。

（２）魔術的因果律

「呪文を唱えれば救われる。この世界に働く霊的な力によって、あなたは成功を勝ち取ることができる。神の律法なんてどうでもよい。霊的な力を信じ、その力を引き出すならば、あなたは幸せになれるのだ。」と説く因果律です。「南無阿弥陀仏」を唱えさせる念仏信仰、称名信仰、「霊のパワー」を強調して「契約遵守」を無視する現在一部で流行しているキリスト教の一派などこの因果律を説いています。

（３）機械論的・魔術的因果律

　（１）と（２）を組み合わせた因果律です。

　これらは、異教に見られる因果律です。

　聖書は、最初から最後まで「神との契約」を重視しており、その因果律は、倫理的です。

　倫理を欠いて、パワーだけを求めるならば、キリスト教は、キリスト教ではなくなってしまうのです。

それゆえ、倫理について何も言わず、ただ「できると信じれば何でもできる」と教える「可能性思考」や、現代心理学などの、「非契約的解決」、聖霊のゆがんだ強調による「悪霊の追い出し」「聖霊による癒し」を主張するキリスト教の派には、注意しなければならないのです。