アメリカの二面性

 

アメリカは、2つの土台を持つ国です。

一つは、キリスト教の土台。

もう一つは、近代合理主義の土台。

ピューリタンの人々は、最初キリスト教の土台だけで国造りをしようとしましたが、入植者の中に近代合理主義者がいて、「人間理性の自律」を説き、「聖書に基づかなくても人間の理性で良い国は作れる」と言いました。彼らは、「三位一体の神ヤーウェ」を建国の根本とするのではなく、「自然神」を崇拝し、「自然法」に基づいて国を作ろうとしました。

結局、アメリカの建国を担った人々は、後者であり、前者はまんまと騙されて、国をのっとられてしまいました。

アメリカの歴史を見るときに、この近代合理主義の陰謀に関する知識がないと大きな誤解をしてしまいます。

(この巧みな陰謀については、ゲイリー・ノースのPolitical Polytheism に詳述されています。)

19世紀になると、近代合理主義は、ヘーゲルにおいて大きな体系ができあがりました。ヘーゲルは、カントの「神抜きの世界観」に基づいて、「弁証法的歴史発展説」を唱えました。つまり、世界の歴史は「聖書の神」が動かしているのではなく、ヘーゲルが定義した「神」が弁証法的対立・総合を通して進化する過程である、というのです。

聖書は、「世界の歴史は、創造者なる神が、離反した世界を再び獲得し、御自身の栄光を全地に現す過程である。キリストの王権は世界の隅々にまで及び、ついに全世界がキリストを礼拝し、聖書に基づいてあらゆる事柄が運営されるように予定されている」と主張します。

しかし、ヘーゲル主義は、世界は、他者によって動かされているのではなく、発展の法則によって自己運動しているのだ、というのです。ここにおいて、聖書の神は完全にのけ者にされています。「神がいなくても、世界は勝手に進化しているのだ」というのですから。

近代とは、このように、「聖書の神からの離反」の時代であり、アメリカもこの無神論の影響を強く受けました。

キリスト教と近代合理主義は、相反する原理としてアメリカを形作っており、キリスト教ですら、後者の影響によって変質し、半合理主義のようなものになってしまいました。その一つはリベラリズムであり、もう一つはディスペンセーショナリズムです。前者は歴史的なプロテスタント教会を破壊し、後者は、それによって破壊されたキリスト教に飽き足らなくてそこから出た福音的教会を支配しました。つまり、近代合理主義は、ほとんどすべてのキリスト教を破壊したのです。

この合理主義側の攻撃に対して、聖書的キリスト教を純粋に守ろうとする運動が起こされました。それが、メイチェン→ヴァン・ティル→ラッシュドゥーニーの系譜です。

近代合理主義側の攻撃は、アメリカの教育の父と呼ばれるヘーゲル主義者ジョン・デューイが主導した公教育を通じて、アメリカのすべての市民を巻き込もうとしています。公立学校を通じて、近代合理主義に基づくヒューマニズムが教えられ、子供たちは次々と無神論者になっていきました。この思想的な変化は、公立学校において祈りが禁止され、十戒を教室の壁にかかげることが禁止されるようになった1960年代から顕著に実を結ぶようになりました。道徳の崩壊、学校内暴力、家庭内暴力、幼児虐待、麻薬、犯罪の激増…。

政治の面では、ヘーゲル主義者が作ったスカル・アンド・ボーンズが、アメリカの権力の中枢を支配し、世界に紛争を巻き起こし、それを解決する過程で世界の様々な地域を支配し、アメリカを中心に世界統一政府を作ろうとしています。事実、国連の設立にはスカル・アンド・ボーンズが大きく関わっています。

現在、アメリカの生活のあらゆる部分が近代合理主義者によって支配されようとしており、信仰の自由を求めてアメリカに渡ってこようとしてきた人々の理想はほとんど消えかかっています。

しかし、神は、彼らが世界を支配することを望んでいません。神の計画は、キリストによって世界が再編されることです。ですから、神は、敵が一方的に活躍することを許されないでしょう。事実、1990年代から、宗教右派を通じて、政治の領域において、再建主義者(もしくは、再建主義を受け入れたクリスチャン)が地方議会で議席数を伸ばしつつあります。

アメリカは、ソ連のように、極端な独裁主義や、全体主義を世界に押し付けることはしていません。戦後の日本を見ても、また、現在のアフガニスタンを見てもわかるように、アメリカのやり方は、中庸を尊ぶ方法です。これは、アメリカの文化の土台にキリスト教の反中央集権主義が根付いているからでしょう。それゆえ、逆に、私たちは、アメリカを動かしている人々の隠れた意図が見分けにくくなっているのです。アメリカを知る人々は、「ほんとうにアメリカはそんなひどいことをたくらんでいるのか?」と疑ってしまうのですが、しかし、背景を見ると、彼らの目指しているのは、世界支配であることは明らかです。

アメリカの歴史を見ると、アメリカ人の陰謀の方法がいかに巧みであるかわかります。彼らは、暴力をふりかざして人々を抑圧するような方法を取りません。彼らは、直接に支配するのではなく、必ず、国連の名のもとに「合法的」に事を処理しようとします。イラク攻撃も、米国で単独に行わず、必ず多国籍軍という形をとります。それゆえ、世界は、米国がフェアな国であるように錯覚してしまうのです。もしロシアやドイツや日本がこのような役割を果たすとすれば、これほどスマートなやり方はしないでしょう。明らかに、他国を虐げていることが分かるような方法になるでしょう。ソ連やドイツや日本による他国支配は、それゆえ、被支配国からの反発により崩壊してしまいました。アメリカはこのような馬鹿な方法はとりません。もしそのような露骨な支配をするならば、まず第一に国民が納得しないからです。一般のアメリカ人は、「民主主義を世界に広める伝道者」を自認しています。自分の国がかつて植民地であったという歴史があり、植民地からの独立を誇りにしている国民ですから、自ら植民国になることは、良心が許しません。それゆえ、為政者は、国民の自尊心をくすぐるような寛大な方法を取らざるをえないのです。日本に対しても、人道援助を行い、アメリカの映画や音楽やキリスト教などを伝え、沖縄を返還し、できるかぎり、「自分たちは世界の解放者なのだ」という印象を与えることに努めてきました。

アメリカにクリスチャンの文化がある限り、これからも露骨な搾取は起きないでしょう。しかし、私たちは、露骨ではないからと言って、搾取がないと考えてはなりません。アメリカの野望は、戦前は太平洋と極東、そして、戦後は中東の産油地帯にありました。事実、この地域の富はアメリカに流れるように仕組みができているのです。

アメリカの膨張主義を考慮しなければ、米西戦争、太平洋戦争、冷戦、朝鮮戦争、ケネディ暗殺、ベトナム戦争、湾岸戦争、同時多発テロの意味を知ることはできないでしょう。

まさか、ケネディ暗殺が謀略によるものではなく、オズワルドの単独犯行であるなどとまともに信じることはできないでしょう。また、これらのアメリカの戦争の意味が「相手国が米国を攻撃したから、報復しただけだ」などという政府見解を信じることはできないでしょう。

膨張主義の政府が「私たちは膨張したいのです」と発表するはずはありません。だから、公式見解を真に受けることはできないのです。

アメリカの行動を見るには、さきに挙げた2つの要素を考慮しなければなりません。

一つは、キリスト教の人道主義が基本にあるということ。もう一つは、それと相矛盾する近代合理主義によるサタン的な野望があるということ。

神は、世界の様々なサタン的な政権を打倒するためにアメリカを用いてこられた、というのは事実だと思います。戦前の日本やドイツ、冷戦時のソ連、アフガニスタンのタリバンは、人々を束縛するという非人間性を共通して持っているように思われます。それゆえ、日本やドイツ、ロシア、アフガニスタンは、アメリカによって解放されてよかった面がありました。

しかし、私たちは、アメリカの本質にこれらの2つの要素があることを見て、そのサタン性をも考慮する必要があると言えるでしょう。

戦後の日本は、デューイの集団主義によって教育を支配されましたし、米軍の基地を置かれて、喉元に刃をつきつけられ、半植民地化されました(もしアメリカが日本の完全独立を求めているならば、基地を放棄するはずです)。17世紀から、非植民国の特質は、「自立心」の喪失でした。日本は、自国を自分の手で防衛するという気概を失ってしまいました。

真の解決は、アメリカが、ヘーゲル主義を捨てて、聖書的キリスト教に立ちかえることにあると思われます。そうしないと、これからも、アメリカは、世界政府の樹立のために、各地にCIAを派遣し、内乱を起こし、そこに基地を置いて、自国の覇権を確立しようとするでしょう。

アメリカのクリスチャンが、聖書的キリスト教に帰ることにより、政治が変わり、覇権主義は影をひそめるようになるでしょう。そして、世界からアメリカ発の内乱やテロ、戦争は消えていくでしょう。

 

02/01/13

 

 

 




ツイート