天皇が世界の盟主になる?
最近、日ユ同祖論を信じるクリスチャンによって「日本は世界の盟主になる。」と主張する本が出版された。
日本が神の国であるとか、将来天皇が世界の王となる、といった主張は、カルケドン会議で決定された「キリストの二性一人格」の教理の否定である。
この世界において、キリスト以外の主権者は存在しない。
「いや、私はキリストが王でないとは言っていない。ただ、そのキリストの王権を地上においてあらわす人物がいるべきであり、それが天皇であると述べている。」と言うならば、やはり、カルケドン信条の否定なのだ。
なぜならば、キリストは、神であると同時に人間でもあるからである。
地上に神の代理的人物が存在すべきであると主張することは、真の神の代理的人物であるキリストを否定している。キリストは、人間として肉体を備えており、彼だけが地上における人的な権威なのだ。もう一人の人的権威は必要ない。
古代からキリスト教は、キリスト以外の人的権威を持つという誘惑に負けてきた。
ローマカトリックにおいては、教皇やマリアや聖人、そして教会が人的権威として立てられた。
ロシア正教、ギリシャ正教においても、聖人崇拝、教会崇拝、皇帝崇拝が現われた。
人間と神の仲介者は、神人であるキリスト以外に存在しない。
キリストを仲介者として認めない考えの前提には、「キリストは神であって現在人間ではない。」という、霊肉二元論がある。霊は高次で、肉は低次であるというギリシャ思想に影響されると、キリストを霊の領域に収めて、肉の領域を空白にしてしまう。そして、この空白を埋める人的権威を別に設定してしまう。
キリストは、霊の領域も肉の領域も支配される統一的支配者である。
日本が神の国で、天皇が世界の盟主になるなどという考えの根底には、このようなグノーシスまがいの霊偏重主義がある。