ハル・リンゼイの再建主義批判
1970年代に『地球最後の日』(いのちのことば社)という本を著して3000万部を売り上げたハル・リンゼイは、ディスペンセーショナリズムの終末論を世界中に広めるのに大きな貢献をした人物である。
リンゼイは1989年に、再建主義を批判する『ホロコーストへの道』(Hal Lindsey, The Road to Holocaust, Bantam Books, New York)を著した。
彼のハチャメチャな批判の一例を御紹介しよう。
彼は、ラッシュドゥーニーの『聖書律法綱要』(Institutes of Biblical Law, P&R, 1973)から次のように引用し、ラッシュドゥーニーがあたかも行為義認(人間は行いによって救われるという教義)を主張しているかのような印象を読者に与えようとした。
「ラッシュドゥーニーは、さらに次のように付け加えた。『神にとって律法は大変重要なものであり、律法の要求は、恵みを受けるための必要条件として、満たされる。』つまり、言いかえれば、律法を守ることによって、我々は恵みを得る。」(157ページ)
(原文)
"Rushdoony adds, 'So central is the law to God, that the demands of the law are fulfilled as the necessary condition of grace.' In other words, we earn grace by keeping the Law."
ここまで読むと、ラッシュドゥーニーは、人間は行いによって救いに入ることを主張しているように思われるが、しかし、ラッシュドゥーニーのもとの文章には次の一文が付け加えられていた。
「そして、神は、その律法の要求をイエス・キリストによって満たされる。」('and God fulfills the demands of the Law on Jesus Christ.')
お分かりであろうか。
ラッシュドゥーニーが言いたかったことは、「律法の要求を成就しなければ恵みを受けることはできない。神がイエス・キリストの上に御怒りを下したことによって、我々の罪が裁かれ、律法の要求は満足されたので、我々は恵みを受けることができるのである」ということである。
事実、ラッシュドゥーニーは、同じ著書の中で次のように述べている。
「人間が義と認められるのは、イエス・キリストにある神の恵みによる。」
(Man's justification is by the grace of God in Jesus Christ.)(61ページ)
リンゼイは、後半部分を意図的に省略することによって、読者に誤った印象を与えようとした。
これだけでも、ハル・リンゼイのキャラクターは明らかではないか。
このような中傷を平気で行える人物が言うことをまともに信じられるだろうか。
彼の『地球最後の日』から始まった切迫再臨騒動は全世界のクリスチャンを巻き込んだ。それは、彼が再臨の期日として予想した1989年(*)を過ぎてもまだ続いている。
そろそろ我々は目を覚ます時ではないだろうか。
(*)リンゼイは、『1980年代:ハルマゲドンへのカウントダウン』(The 1980's: Countdown to Armageddon, Bantam, 1980, p.8)において、「1980年代の10年間は、周知のとおり、歴史における最後の10年間となる可能性が非常に高いのである」と述べた。