近代を超克するものはヒューマニズムの中にはない

 

<ご質問>

世界は良くなっているのか?という質問に対して、富井師は、「たしかに、千年王国であると言われる今の時代においても、殺人事件や、暴力事件などが絶えませんので、『これでもキリストは王なのか?』と疑いたくなるのですが、しかし、かつての世界の現状を見るならば、現代は、古代や中世と比べて各段に良くなっていると考えることができます。」「もちろん、世界において飢餓や戦争がまだ起こっていることは事実です。しかし、総合的に見れば、人々を束縛する迷信や奇習や因習などに染まったサタン的な文化は、世界から消滅しつつあるという傾向を否定できません。」と答えておられましたが、確かにその通りだとは思うのですが、千年王国後キリスト再臨説の立場では、福音が最終的には勝利し、サタン的な文化が消滅して、キリストが再臨されるということになりますが、再建主義者は、それは年代的にはいつ頃になると考えておられるのでしょうか?10万年後とか50万年後ではないと思うのですが・・・・・・その可能性もあるのでしょうか?また聖書に、福音が勝利して、全世界の人々がキリストの弟子となる具体的な時期を示唆するものはあるでしょうか?

 

<お答え>

 福音が最終的に勝利すれば、全世界の国民が弟子となりますが、すべての人が救われるとは限りません。なぜならばイエスの命令は、「すべての国民を弟子とせよ」(マタイ28・20)であって、個人として全員が救われることを保証していませんので。すべての民族、国民がキリスト教化され、国家の法律が聖書律法の上に築かれ、国民の大多数がキリスト教を信じ、キリスト教の原則が社会のあらゆる領域に浸透して、あらゆる領域においてキリストの主権を認めるようになることをキリストは命じておられるのであって、個人がすべてクリスチャンになるとは限りません。

 

 年代的には、それほど遠い将来ではないと思います。現在、世界を支配する原理としてこれまで機能してきたヒューマニズムが崩壊してしまったため、世界は代替の原理を探していますが、もはや神ぬきで世界が成立していると主張する立場は、手持ちのカードを出し尽くした状態です。

 

 神ぬきで、なおかつ、世界を合理的に解釈することを目指したヒューマニズムの立場が崩壊した(*)以上、残るは、どのようなものであれ、復古主義や神秘主義など、非合理的、神秘主義的なものでしかなく、科学と調和できるものはありません。

 

 占いや神道、仏教、イスラム原理主義などに頼って、近代を超えられる何か合理的・普遍的なものを作ることはもはやできないことが歴史的に証明されていますし、人々もそれを望まないでしょう。

 

 となれば、科学を無視しないで合理的に世界を解釈するには、「宇宙は閉じられた系ではなく、宇宙の外に創造者がいて、創造者によって世界は意味を与えられているのだ」と考える立場――聖書的キリスト教――以外には選択の余地はないでしょう。

 

 世界が聖書的キリスト教を採用するのは時間の問題だといえるでしょう。

 

 また、聖書は、ユダヤ人の回復がイエスをメシアとして受け入れることが世界的リバイバルの始まりであると述べています(ローマ11章)。ユダヤ人のリバイバルはすでに始まっています。現在信仰に入りつつあるのは世俗的ユダヤ人だけであって、ユダヤ教のユダヤ人はまだ信仰を受け入れていません。ユダヤ教のユダヤ人が回復するならば、ついに、聖書が繰り返して預言してきた、世界の回復の時期が到来すると考えることができます。日本も、これに伴なってキリストを信じるようになるでしょう。

 

 

 

(*)カントやヘーゲルの後、人格理念(神ぬきで人間の自由を模索するヒューマニズムの要素)は、新カント学派の実証主義的な科学理念(神ぬきで世界が自律的に成立すると主張するヒューマニズムの要素)からの批判以降、実質的に崩壊しており、科学理念と同居できる人格理念はもはや存在していません。つまり、世界が科学的法則のみによって成り立っている(宇宙の外側からの働きかけは一切存在しない)という世界観は、人間の自由を徹底して剥奪する運命にありますが、その宿命論の呪縛から解放する原理はもはやヒューマニズムの中からは生まれません。もし生まれたとしても、カントのように世界の中に科学的法則が通用しない領域を作るか、もしくは、ヘーゲルのように、テーゼとアンチテーゼを対立させる科学的な思考方法を捨ててしまうかしかなくなってしまい、どちらも非合理的との批判を受ける以外にはなく、どうどうめぐりをする以外にないのです。実存主義は、このヒューマニズムの人格理念の崩壊に対する絶望の表明であり、これもやはり非合理的な思想で、新しい人格理念を提唱したわけではないですから、結局、ヒューマニズムは、科学理念の圧制から逃れることはできなかったということが証明されてしまったのです。

科学理念から人間の自由を救い出す道は、「宇宙を閉じられた系と考える」ヒューマニズムにはなく、宇宙の外側にあって宇宙のあらゆる部分と絶えず関わっている超越神を信じるキリスト教以外にはないのです。

 

 

 

 

 




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