聖書は医学を否定しているか?

 

<ご質問>

『人事を尽して天命を待つ』を読ませていただきました。私はその中で言われている「信仰があるなら、医療など頼る必要はない。」という人々(ホーリネス系に多い)の一人です。おっしゃるように、私を含めた回りのクリスチャンはあまり医療に頼りません。人間として出きる最善とは、神に神癒を祈ることだと信じているからです。結局、医療に頼るクリスチャンは神さまを信じ切れない人だと思います。神は聖書を通して何度も、信仰の必要性を説いていますし、その結果として、義とされる(主の御心なら、癒しも与えられる)のではないでしょうか?人間としてできる最善は、創造主に帰ること、神に祈る事だ、と福音書、聖書全体が証明している事実です。

 

<お答え>

「人間として出きる最善とは、神に神癒を祈ることだと信じているからです。結局、医療に頼るクリスチャンは神さまを信じ切れない人だと思います。神は聖書を通して何度も、信仰の必要性を説いていますし、その結果として、義とされる(主の御心なら、癒しも与えられる)のではないでしょうか?」

神癒を期待することは間違いではありませんし、それは素晴らしいことだと思います。また、信仰はクリスチャンにとって基本なので、奇跡を期待することは正しいことです。

しかし、人間には、奇跡を期待するだけではなく、「地を従える」使命が与えられています。

神は、この世界を奇跡だけで成立させているのではなく、自然の法則にゆだねておられます。

もし神の御心ならば、この世界で起こるすべてのことが法則によらずにすべて神の超自然的な働きで起こることも可能ですが、しかし、現実には、ほとんどのことは法則に従って起こります。

コンピュータのプログラミングをしていて思うのですが、自分がどんなに完璧だと思って書いたスクリプトでも、実際に機械に読ませてみると、エラーが出ます。エラーの出る原因はそのほとんどが自分が書いたスクリプトにミスがあるからです。ミスがなければ、機械は規則的に読み込んで結果を出してくれます。

神がなぜ我々の環境を法則や規則に支配させたかと言うと、それは、人間が科学技術を発展させて、地上に神の支配を確立するためです。もし、法則どおりに自然が動かずに、神の奇跡だけによって進行するならば、我々は、自然を探求し、その法則と性質を理解し、それを実用に役立てようとする意欲を殺がれます。

実験をやるたびに違った結果が出たらどうでしょうか。「ああ、今神の御心が変わったのだ。」というように、科学は人格的意志を主な関心事とする文学のようなものになってしまいます。

神は、自然界を法則に委ねられ、人間に向って「わたしが創造した世界に働く法則を探り、それを実用化せよ」と命令されたのです。科学は、このような「法則によって支配された自然」を対象とするのでなければ成立しません。

近代の科学は、このように自然を「法則的に動くもの」と認識するところから始まりました。それまでの自然観は、自然を「人格的に動くもの」と解釈し、物体の運動は「物体の本質がその方向に向う意志を持っているから」と解釈していました。このような「人格主体」の自然観では、法則を探求する科学は生まれないのです。

しかし、逆に、自然科学は、最初の「神は自然を法則に委ねられた」という部分を取り除いて、「自然は神の意志とまったく無関係に自律的に動いている」という極端な立場に移行しました。現代の科学は、このように神と無関係に自然を見ており、それゆえ奇跡を否定します。

聖書は、この二つの極端を否定します。

「物体は神の奇跡の連続によって動く」という立場も、「物体は神の意志とはまったく無関係に動く」という立場も否定します。

この世界に起こることはすべて、常に、神の意志によって起こります。しかし、神の意志は法則性のまったくない奇跡の連続という「直接介入」によって起こるのではなく、法則に委ね法則に支配させるという「間接介入」によって起こります。それゆえ、人間は、ほとんどの場合、起こることは法則性にのっとって起こると期待でき、それゆえ科学的探求が可能になるのです。

しかし、だからと言って、「自然において起こることは『ことごとく』自然法則にのっとって起こる」とは言いません。神は、法則に委ねていたことをある時にやめて、直接介入される場合があります。不治の病が癒されたり、死人がよみがえったり、普通なら不可能なことが可能になったりします。また、その逆もあります。普通なら長生きするはずの人が突然亡くなったり、合格するはずの試験に落ちたり、ということがあります。

そういう時に人間は、神の存在と力を知るのです。

神が病気を癒されるのは、超自然的神癒だけではありません。神は、人間に科学的探求を命じておられ、人体の仕組み、性質、法則を探って、その知識を利用して病気を治療することを命じておられるのです。

 

 

 

02/03/17

 

 

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