クリスチャンはシオニズムを手放しで肯定してもよいか?


(1)
メシアニック・ジューの運動家の中には、世俗ユダヤ人、世俗イスラエル社会を含むユダヤ社会をそのまま肯定する人々がいる。

「国際ユダヤ人社会を支援しよう」と言う人もいれば、「エルサレムのために祈れ」という旧約聖書の言葉を、旧新約聖書の経綸の違いを無視して文字通り実践すべきだ、と言う人もいる。

こういった誤謬は、「聖書はイスラエルの国家が成立することを予言している。だから、イスラエルの政策を手放しで支援すべきだ」という盲目的な親イスラエル性を持つディスペンセーショナリズムに由来すると思われる。

しかし、我々クリスチャンは、ある民族や国家を手放しで認めたり、応援したりすることはできない。

なぜならば、すべての民族や国家には、サタンに由来する要素が多く含まれているからだ。


(2)
一口にユダヤ、イスラエルと言っても、内容は様々である。

現代のイスラエル国家を形成したシオニズムには、サタンに由来するものが含まれている。

その一つに、現在のイスラエル労働党の起源となった社会主義シオニズムがある。(*)

社会主義シオニズムは、その名前からも分かるように、社会主義、マルクシズムである。

社会主義シオニズムの提唱者として有名なモーゼズ・ヘスは、マルクスとエンゲルスを社会主義に引き入れた張本人であり、ドイツ社会民主党創設者でもあった。

ヘスは、宗教を嫌い、「宗教は大衆の阿片である」と述べた。この言葉は、1848年の『共産党宣言』の著作に取り入れられた。

彼は、『ドイツ国民のための赤色教理問答』において次のように述べた。


黒とは何か?黒とは聖職者である。…これらの神学者たちは、最悪の貴族である。…聖職者は、神の名によって人々を抑圧する。第二に、聖職者は、「神の名において、抑圧され、搾取されることを甘受せよ」と人々に教える。第三に、これは最も重要なことだが、聖職者は、神の助けを借りて、この世において豊かな生活を送りながら、人々には、天を待ち望めと説く。

赤い旗は、永久革命を象徴している。あらゆる文明国の労働者階級が完全な勝利を得る――つまり、赤い共和国を建国する――までこの革命は続く。…社会主義革命は、私の宗教である。…労働者たちは、一つの国を征服したら、世界にいる残りの同胞を助けなければならない。
(Karl Markus Michel, Politische Katechismen: Volney, Kleist, Hess(Frankfurt-am-Main: Insel Verlag, 1966); Moses Hess, Red Catechism for the German People, pp. 71-73; cited in R. Wurmbrand, Marx and Satan (Westchester, Illinois: Crossway Books, 1987.)p.87.)

ヘスは反キリストであり、マルクス主義は「中世の宗教に対する最後の一撃」であると述べた(Hess, letter of September 2, 1841 to Berthold Auerbach, in Marx, Karl and Engels, Friedrich, Historisch-kritisch Gesamtausgabe. Werke, Schriften, Briefe, on behafl of the Marx-Engels Institute, Moscow, published by David Rjazanov (Frankfurt-am-Main: Marx-Engels Archiv, 1927), I, i (2), p. 261; cited in ibid., p. 88.)。

彼の目的は、「天から神を追い出す」ことであり、神がイスラエルに与えられる霊的回復という健全なシオニズムを破壊することである。(**)

ヘスは、シオニズムを「人種闘争」と定義した。

人種闘争こそメインであり、階級闘争は副次的なものに過ぎない。
(Moses Hess, Rome and Jerusalem (New York: Philosophical Library, 1958), p. 10. cited ibid., p. 88.)

パレスチナにおける人種闘争といえば、恐らくユダヤ人とパレスチナ人の闘争であろう。このような人種闘争を通じて進むシオニズムという彼の考えが、イスラエルの指導者にどれだけ影響を与えているのだろう。

シオニズム運動への貢献者のひとりとしてイスラエルに埋葬されている以上、その影響を少なく見積もることはできない。(***)


まとめ:
ヘスは、マルクス主義の祖として、地上に階級闘争の火をつけ、無辜の人々の膨大な血が無益に流れるきっかけを作った。

それだけではなく、ユダヤ人とパレスチナ人の間に際限のない人種間闘争をもたらす、悪のシオニズムを作り上げた。

我々クリスチャンは、ヘスの影響を濃厚に受けた社会主義シオニズムと現在イスラエルが行っているパレスチナ人との人種間闘争を受け入れてはならない



(*)
イスラエルの初代首相ダビデ・ベングリオンは、独立前に社会主義シオニスト党の指導者だった。

(**)
社会主義シオニズムの根本目的は、神を天から追い出し、その代わりに人間が王座につくことである。

ヘスは次のように述べた。

ユダヤ人男性はみな、自分自身のうちにメシアを作り出しつつある。ユダヤ人女性は、自分自身のうちに母なるデロロサを作り出しつつある。
(Ibid., cited in ibid., p. 88.)

ベル・ボロチョフは、

資本主義の発達は必然的にユダヤ人のパレスチナ移住を促進するだろう。パレスチナ以外の地において、ユダヤ人の経済構造が、ユダヤ人プロレタリアートの階級闘争の基盤となることはない。

…シオニズムは、ユダヤ人にとって、歴史的経済的必然である。ユダヤ民族の解放の先頭に立つという歴史的な役割は、ユダヤ人プロレタリアートに委ねられるのである。(http://www.us-israel.org/jsource/Zionism/Socialist_Zionism.html

と述べた。

つまり、社会主義シオニズムにおいて、第2の出エジプトのモーセ役を果たすのは、ユダヤ人プロレタリアートだ、というのだ。

(***)
ヘスは、パリで死に、遺言でコローニュのユダヤ人墓地に埋葬するよう要請したが、1961年、彼の遺骨はイスラエルに移送され、ナホム・シルキンやベル・ボロチョフ、ベール・カツネルソンら、他の社会主義シオニストたちとともにキンネレット墓地に埋葬された。(http://www.us-israel.org/jsource/biography/hess.html

(キンネレットは、社会主義シオニスト運動の発祥の地であり、伝説化した。ここにある墓地は、この運動の主要な人物を奉る神殿のようになった。…ここを訪ねることは、社会主義の歴史において、最も熱心で、恐らく最も初期の、最も悲劇的な労働運動の一つに敬意を払うことを意味する。http://www.jafi.org.il/education/moriya/tiberia/lakekinneret.html

 

 

2004年1月31日

 

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