民主党候補選挙で、ディーン氏がどうして敗れたのか。
サンフランシスコの非営利技術企業ネットワークの主幹ヴィンス・ステールの分析を要約してお伝えする。
(http://www.guardian.co.uk/uselections2004/story/0,13918,1152741,00.html)
どうやらメディアが大きく絡んでいるらしい。
「…ディーン氏が政治の舞台から完全に消え去る前に、彼の選挙運動に何が起こったのかを知ることは重要である。というのも、政体からディーンフィーバーを駆逐するのに、メディアが重要な役割を演じているからだ。」
なぜメディアが動いたのか?それは、ワシントンの有力者たちが彼の選挙運動に脅威を覚えたからだ。
「ディーン氏の選挙運動は、ワシントンの有力者たち――すなわち、アメリカの政治メディアとワシントンの職業的政治エスタブリシュメント――にとって大きな脅威であったからだ。
ディーン氏の人気は急上昇した。しかも、これらの、政治権力の2大勢力の影響外で。
…意識してか無意識にか、政治エリートたちは、もしディーン氏の選挙運動が成功したら、大衆選挙民の票獲得の指南役としての自分たちの仕事がダメにされてしまう、と考えた。」
ディーン氏は、インターネットを通じて草の根運動を展開した。このような新しい手法は、従来の、政治コンサルタントや資金収集専門家の仕事を奪うことになる。
最初の大きな攻撃は、2003年6月に、『ミート・ザ・プレス』の司会者ティム・ルッサートから加えられた。彼は、ディーン氏に恥をかかせるような質問をし、多くの視聴者に、無能さを印象付けようとした。
彼が尋ねたのは、「イラクにいる米軍兵士の正確な数」とか、「当時、戦闘兵の数」などであった。
ディーン氏が、「だいたい…くらいでしょう」と答えると、彼は、「最高指揮官になりたいなら、これくらいのことは知ってなきゃだめだ」と叱りつけたという。
メディアは、ディーン氏に不利になるような報道をしつづけた。
2003年に、ディーン氏に関する肯定的な報道は、全体の49%だったが、他の民主党の有力候補に関する肯定的な報道は、78%だったと、政治的に中立な『メディアと公共問題センター』が伝えた。
それでは、ここに何らかの陰謀があったのだろうか。そうではないらしい。
「マスコミのレポーターが一致して彼に対して陰謀を働かせて貶めようとしたのではない。むしろ、彼らは、本能的に、ディーンを泡沫候補に仕立てようとしたのだ。なぜならば、もし彼が成功すれば、自分たちが果たしてきな世論形成という政治的な影響力を奪われると悟ったからだ。」
すでに述べたように、ディーン氏の手法がネットによる直接的支持集めであり、彼の発言には、「私はマスコミの世論調査を見ない」というような言葉が多かった。
周知のように、インターネットの利点は、「仲介業者の排除」にある。
ものを生産者から直接に購入できる。出版社を経由せずに、本を出せる。
それゆえ、当然、インターネットの利用による政治活動に対して、仲介業者である政治コンサルタントやマスコミは黙っていなかったのだ。
今回のディーン氏の選挙運動の盛り上がりから得られるのは、「インターネットによる選挙運動は無力だ、ということではなく、伝統的なメディアとワシントンの政治エスタブリシュメントが一致協力して働けば、新しい形態の政治運動をつぶす力がまだある」ということだ。
「ディーンの選挙運動の威力は、今回の選挙では見られなかったかもしれない。しかし、それは永遠に消滅してしまったのではない。それが将来どのような形に変わり、どれくらい強力になるか、誰も知らない。次回には明らかになるだろう。」