宗教右派のクリスチャンは政治に関わる前にまず学ぶべきだ
今、アメリカクリスチャン同盟は200万人の支持者を持ち、ブッシュ大統領すらも動かす勢力になっている。
彼らを政治活動に目覚めさせたのはR・J・ラッシュドゥーニーとゲイリー・ノースである。
それゆえ、批評家たちは、再建主義とアメリカクリスチャン同盟などの宗教右派を混同する傾向があるのだが、実際はまったく別物である。
宗教右派を支配している神学は、再建主義が基礎を置くカルヴァン主義ではなく、1830年代に現われた新興神学であるディスペンセーショナリズムである。
今日、イラク問題などで顕在化した宗教右派の「力による覇権拡大主義」は、このディスペンセーショナリズムに由来する。
ディスペンセーショナリズムの起源は、カルヴァン主義にはなく、アルミニウス主義にある。アルミニウス主義は、キリスト教の扱う領域を内面(精神)に限定した。カルヴァン主義は、政治経済も含めて全被造物を神の支配のもとに置くことを目指すが、アルミニウス主義は、政治に関わることを拒否する。
カルヴァン主義が政治について歴史的に長い間見解を発達させてきたのに対して、アルミニウス主義そしてそれに由来するディスペンセーショナリズムは政治について十分に考えてこなかったのである。
このような政治に関する考えの未熟さこそが、近年 宗教右派がトンチンカンな政治活動をしている原因である。
これまで、「政治はこの世の領域のことであり、俗人がすることだ」と無関心だった人々が突然いかなる学習もなしに政治に関わってまともなことができるはずがない。
宗教右派の人々は、まずじっくり学ぶことである。カルヴァン主義が蓄積してきた高度な政治思想と、カルヴァン主義者が政治史に残した足跡を研究することである。
政治に関わる前に、カルヴァン、ラザフォード、アブラハム・カイパー、ヘルマン・ドーイウェールト、R・J・ラッシュドゥーニー、ゲイリー・ノースなどの著書を読み、ピューリタン革命、アメリカ革命などに関する著作を学んで、聖書的に正しい政治とは何かを調べることだ。
宗教右派を構成する人々が持っている利点は、その動員力である。テレビ伝道などで集めた多くの支持者は貴重である。しかし、彼らを無知なまま政治に参加させても、間違った選択をするだろう。
宗教右派の人々は、まだディスペンセーショナリズムのプレ・ミレ終末論を信じている。
このような謬説を信じたままで政治に参加したらどうなるだろうか。
ハルマゲドンの戦いがまもなく始まるなどということを真面目に信じている人々が政治に関わればどうなるだろうか。
黙示録に関する正しい釈義を学んでおらず、その預言が未来に起こると信じている人々が政治に関わればどうなるだろうか。
現実的で、バランス感覚を持った精神的に成熟した人間から見れば、「まもなくハルマゲドンが起こる」と信じている人々は、「頭のネジが外れた人」か「夢想にふける子供」だ。
そんな人間が、200万票の力で、世界の唯一の超大国の大統領を動かすなんて、悪夢じゃないか?
2003/12/23