政変後のロシアの悲劇

 


t.A.T.u. というロシア人の女子高校生風2人組のグループが話題になっている。彼らは、どうやらアナキズムで売っているようだ。

レズビアンのようなことをしたり、番組をすっぽかしたり、小泉首相にカメラを向けたまま握手したりと、とにかく「無律法」を全面に出しているが、愚かだと思う。

私がいたころのロシア(1982-3)は、ソビエト政権で、治安がよく、殺人はほとんどなかった。なにせ、レニングラードには、いたるところに警官が立っており、とても犯罪など起こる様子はなかった。

しかし、政変後は何もかもめちゃくちゃである。殺人、レイプ、窃盗など、まるでソドム・ゴモラのようだ。

マルクス主義は、基本的に虚無主義であり、アナキズムである。

無神論であるから、普遍的道徳が否定される。

神を否定し、宗教を否定するのであるから、結局「人が見ていなければ何でもできる」というように、がりがりの功利主義である。

マルクス主義社会においては、道徳が破壊されているから、人々の行動を制御するのは、もっぱら警察力以外にはない。ソ連の時代においては、警察力が機能していたから社会の秩序が保たれていた。

しかし、政変後警察力も機能しなくなったから、人々の行動は、アナキズム丸出しになる。道徳もへったくりもなくなるのだ。

t.A.T.u. は、マルクス主義によって道徳を破壊されたロシア人の悲劇を反映している。

1917年のロシア革命以前には、ロシア人はロシア正教のもとで、道徳的な生活をしていた。皇帝を倒すことに賛成していたのは、ごく一握りの社会主義者とそのシンパたちだけで、圧倒的大多数の町人や農民は、皇帝を愛し、尊敬していた。

1880年代のユダヤ人迫害の主要な原因は、デマだった。

直前に起こった皇帝暗殺事件の主犯がユダヤ人であるというデマが人々の間に流れた。そして、「皇帝は、ユダヤ人に復讐せよ、と我々に命令しておられる」という噂が加わり、南ロシアにおける大暴動に発展したのである。

ロシア人はユダヤ人と比べて純朴で、マヌケ・キャラである。

かねてから知り合いであった、尊敬しているユダヤ人に向かってロシア農民たちが、「どうか許してください。これは皇帝の命令なのです。仕方がないのです」と言いながら、彼の家の窓ガラスを割ったり、中の家具をバールで壊したりしたのである。

確かに、南ロシアの商業、工業を独占していたユダヤ人に対するやっかみがあったのは事実だが、基本的に、ロシア人は、ロシア正教を信じる宗教的な人々だったのである。

マルクス主義が人々の心に与えた破壊的な影響は深刻である。しかし、今は若い人々の間にキリスト教が復活しつつあり、これによって立ち直って欲しいと思う。

 

 

2003年12月1日

 

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