救世軍山谷大尉の再建主義論に反論する2
<Y>
その内容は、現代社会に神政政治を樹立し、旧約聖書の律法に基づいた司法を行って、聖書に示された「正義」を「社会正義」として実現させることを目論むものです。創始者は、カルヴァン派の神学者ラッシュドゥーニーという人で、それをヴァン・ティルやゲイリー・ノースといった神学者、思想家が継承発展させています。
ゲイリー・ノースの主張は特に過激であることで知られています。
旧約聖書の律法に根拠した司法制度の下で「死刑」を執行させよ、と主張しています。レイプ、殺人、誘拐犯に対して死刑を執行するだけでなく、堕胎した母親を公開処刑にせよと主張しています。また、異端、冒瀆罪、魔法、魔術、占星術、姦淫、近親相姦、親を殴る子ども、矯正不能な非行少年、婚前交渉をした女性も、すべて死刑に処すべきだと主張しています。
<T>
(1)
旧約聖書の律法は、レイプ、殺人、誘拐犯を処刑せよ、と命じていますね。
旧約聖書の律法を書いたのは、神ご自身なわけですから、神が「レイプ、殺人、誘拐犯」を「死刑にあたる」と考えておられる。
どうして、Y氏は、神のご見解を「過激」と判断されるのでしょうか?
神が、「処刑せよ」と命令されているのに、「いや、神様、それはあんまりにも過激ですよ。」と言うのでしょうか?
Y氏は、神を裁くのですか?救世軍では、大尉になると、神を裁く権威を与えられるのですか?
それとも、新約時代になったら、神は、「レイプ、殺人、誘拐犯」を許す寛容なお方に変わったとでも?
それは聖書のどこに書いてあるのですか?
我々は、聖書を最高権威として考えているから、もし新約時代において神の統治方法が変化したならば、それを聖書から証明しなければならない。
殺人を除けば(殺人の被害者には発言能力がないので)、死罪にあたる罪でも、被害者が刑罰を決定する権威が与えられているので、「姦淫」を疑ったヨセフは、マリアを許し、「内密に去らせ」ようとしましたね。
聖書は、「死罪を犯せば、問答無用に処刑だ」などということを言っていない。
(2)
「堕胎した母親を公開処刑にせよ」
聖書は、胎児を立派な人間として扱っています。
「人が争っていて、みごもった女に突き当たり、流産させるが、殺傷事故がない場合、彼はその女の夫が負わせるだけの罰金を必ず払わなければならない。その支払いは裁定による。しかし、殺傷事故があれば、いのちにはいのちを与えなければならない。」(出エジプト記21・22-23)
人間を殺した場合には、処刑は避けられない。
それゆえ、堕胎の刑罰は処刑以外にはない。
胎児には、抵抗する力がまったくない。
以前、堕胎の瞬間に胎児がどのような状態であるかを映した超音波映像を教会で見たことがあります(おそらく「小さないのちを守る会」のビデオだと思います)。
殺される前に、胎児は殺すための器具を避けて、胎内で逃げ回るのです。そして、殺される瞬間に口を大きく開けてあたかも「叫んでいる」かのような姿が映っています。
堕胎する女性も、医師も、殺人を犯している。
(3)
「公開処刑」についてですが、聖書の処刑方法は、公開です。なぜならば、人々に「神を恐れさせるため」です。
「必ず彼を殺さなければならない。彼を殺すには、まず、あなたが彼に手を下し、その後、民がみな、その手を下すようにしなさい。彼を石で打ちなさい。彼は死ななければならない。…イスラエルはみな、聞いて恐れ、重ねてこのような悪を、あなたがたのうちで行なわないであろう。」(申命記13・9−11)
「町の人はみな、彼を石で打ちなさい。彼は死ななければならない。あなたがたのうちから悪を除き去りなさい。イスラエルがみな、聞いて恐れるために。」(申命記21・21)
ただし、注意しなければならないのは、このような我々近代世俗主義の影響を受けた人間が多数派を占める国家において、聖書を信じるクリスチャンが政権をとったら、無理やりこれらの律法をそのまま適用してよい、ということを意味しません。
あくまでも、このような刑罰の方法や、聖書が定める諸規定は、「社会の圧倒的大多数の人々が聖書を信じるクリスチャンによって構成され、社会全体が神の法を『喜んで』適用し、『喜んで』神との間に国民契約を結んだ」後にはじめて適用できるものです。
神はレイピストではありません。人々が抵抗しているのに、無理やり押し付けることはなさりません。
実際、モーセの民は、あらかじめ国民契約を結び、律法の規定を喜んで受け入れた民だったのです。今日のように宗教的多元主義を喜んでいる日本やアメリカなどの体制に無理やり適用されるべきものではありません。ただし、現在の日本やアメリカの市民が、あまりにも殺人が頻発し、もはや重罰を適用しなければ、社会の安寧を維持できないということを悟って、見せしめ処刑を実行したいと言うなら別です。
2004年1月2日
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