暴力による支配は失敗する

 

律法において、「馬を増やしてはならない」といわれているのは、侵略するな、という意味である。古代において馬は攻撃用の武器であった。

しかし、これは、単に侵略という行為そのものを禁止しているだけではなく、侵略に誘う誘惑物を目の前に置くなという戒めでもある。

つまり、「馬を多く所有すれば、どうしても、それを使用してみたくなるから、増やすな」という意味なのである。

ちなみに、カナン民族の絶滅命令も、このような「誘惑物を置くな」という律法である。

カナン民族は、非常に堕落しており、彼らに対する刑罰は、死刑以外にはなかった。神は、イスラエルを通じて、民族を絶滅することを望まれた。それだけではなく、カナン民族の絶滅命令は、イスラエルへの誘惑物を除去するためでもあった。

「あなたは、あなたの神、主があなたに与えるすべての国々の民を滅ぼし尽くす。彼らをあわれんではならない。また、彼らの神々に仕えてはならない。それがあなたへのわなとなるからだ。」(申命記7・16)

アメリカの軍事力は、世界の他のすべての国の軍事力を合わせたものよりも大きいという。

次々と最先端の科学的成果を取り入れた兵器が登場し、軍備の質は絶えず向上している。

兵器があってもそれを使わないでいるのには、よほどの克己心が必要である。

アメリカの肥大化した軍事力は、アメリカを侵略に誘惑しているのである。

ソロモンは、律法に違反して、多数の馬を所有した。

ソロモンは戦車と騎兵を集めたが、戦車一千四百台、騎兵一万二千人が彼のもとに集まった。そこで、彼はこれらを戦車の町々に配置し、また、エルサレムの王のもとにも置いた。ソロモンの所有していた馬は、エジプトとケベの輸出品であった。それは王の御用達が代価を払って、ケベから手に入れたものであった。エジプトから買い上げられ、輸入された戦車は銀六百、馬は銀百五十であった。同様に、ヘテ人のすべての王も、アラムの王たちも、彼らの仲買で輸入した。(第1列王10・26-29)

この記述は、ソロモンが誘惑の中に落ち込んだことを示している。なぜならば、その次に、彼が女の誘惑に陥ったことが併記されているからである。

ソロモン王は、パロの娘のほかに多くの外国の女、すなわちモアブ人の女、アモン人の女、エドム人の女、シドン人の女、ヘテ人の女を愛した。彼には七百人の王妃としての妻と、三百人のそばめがあった。その妻たちが彼の心を転じた。(1列王11・1-3)

この時を境に、ソロモン政権は腐敗し、ついに、死後、イスラエルは北王国と南王国に分裂してしまう。

「軍事力と女性」は、統治者の判断を誤らせる。

そのことを神はよくご存知なのである。

今のブッシュ政権を担っている人々は、軍事力に誘惑された人々である。

「俺達を打ち負かす者は誰もいない。このような強力な力を持っている我々こそが、世界の覇者となり、遅れた国々を解放し、自由と民主主義を植え付けてあげるべきである」と豪語している。

そして、それに追随する偽預言者ファンダメンタリストたちは、教会の講壇から神の御名を使って、侵略を後押ししている。

まことに、歴史から何も学べない愚か者である。

古来、傲慢になり、力によって覇権を獲得しようとした帝国は短命であった。

「ローマや中国の歴代王朝など、諸国を従えた帝国の歴史には、一つの法則性が見られる。それは、帝国の派遣が周辺諸国から正統なものと認められ、自発的な服従に基づかない限り、帝国は長期の繁栄を享受できないというものである。力に頼る支配はコストが高く、長続きしないのである。」(大沼保昭東大教授『力の支配は長続きせず』朝日新聞2003年7月11日朝刊)

国際世論を無視して、戦争を強行したツケは、ゲリラ攻撃という形で回ってき始めている。

このままだと、多大な戦費が国の経済を圧迫し、国力は衰退の一途をたどるだろう。

早晩、賢い国民は、この愚かな三流大統領を捨てるだろう。


 

 

2003年07月23日

 

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