負けるが勝ち?

 

デイビッド・ウィッギンズがLosing the War on Terror(August 21, 2003)という題名で、論文を発表しているので要約してご紹介する。http://www.lewrockwell.com/orig4/wiggins2.html

=====================
ブッシュはテロに対する戦争を開始し、これまで大きな効果をあげている。ただし、「大きな」といっても、逆の意味でである。つまり、ブッシュの対テロ戦争は、さらにテロを増やしているということである。サダム・フセインの時代には、イラク国連本部に対するトラック爆弾攻撃はなかったのである。

今世界は、イラクでのヨルダン大使館爆破、送油管や送水管の爆破、アフガニスタンでの平和維持軍への攻撃、イスラエル、バリ島、サウジアラビアでの自爆テロ、タリバンの活動活発化、北朝鮮やイランの核開発といった問題を抱えており、オサマ・ビン・ラディンもサダム・フセインもつかまっておらず、アメリカはテロ攻撃の対象国として世界第4位の地位を占めるようになった。

これらに対してブッシュは、「負けているように見えれば見えるほど、我々は勝っているのだ。」と言う。「爆弾が破裂し、兵士や一般市民が死に、赤字が積もり、麻薬が出回り、問題が大きくなればなるほど、我々は実際にますます勝利している」というのだ。ケツを蹴りあげられているのは、進歩の証拠だと。「奴らは追い詰められているのだ」と。8月19日に国連施設爆破事件について、ブッシュは「イラクで我々の活動が進んでいるので、テロリストやサダムの残党は自暴自棄になっているのだ」と述べた。

しかし、これは、事実ではない。アメリカやイギリスなどの諜報機関は、サダム・フセイン政権下に、アルカイダは存在しないか、存在してもその影響はほとんどなかったという事実を得ている。もともとイラクにあったイスラム主義団体は、アンサル・アル・イスラムだけであり、北イラクの片隅でマイナーな活動を行っているだけだったのだ。北イラクは、「飛行禁止区域」に属していたので、フセインは、この団体に手をつけることができなかった。

つまり、アメリカのイラク侵攻は、アンサル・アル・イスラムを活発化させる最良の刺激剤だったということだ。

イラク文民統治官ポール・ブレマーは、「アルカイダと関係のあるテロリスト集団アンサル・アル・イスラムが戦後イラク国内で活動を再開している」と述べた。アンサル・アル・イスラムは今、イラク全土で活動しており、7日にバグダッドのヨルダン大使館を爆破した主犯であると言われている。アルカイダは、ソ連のアフガニスタン侵攻後、最も効果的な志願兵募集活動を行っている。

先週、アフガニスタンでは、タリバンや南部及び東南部の民兵組織との間に、アメリカ侵攻後最大の戦闘が行われ、100人がバス爆破、ロケット攻撃で死亡した。

ブッシュは、「麻薬取引は、テロ組織の主要な資金源である」と述べた。アフガニスタンでの阿片生産は過去最高を記録した。ラムズフェルドは、アフガニスタンの阿片生産を「巨大な問題」であると述べた。タリバン政権は阿片生産をほとんど全廃したのであるが。

ブッシュが提唱した「対テロ戦争」も「対麻薬戦争」も一体何をしたというのか。
さらに事態を悪化させているではないか。ヘンリー・ハイドによれば、コロンビアの麻薬生産も再開され、「アメリカで出回っているヘロインの60%以上がコロンビア製の阿片による」という。
この事態を目の前にしてブッシュはこう言うのだ。「これは、テロリストや阿片生産者が資金を得るために死に物狂いになっているからだ」と。

この「負けるが勝ち」の理屈を使って、ブッシュはさらに多くのことを説明しようとしているように思える。「巨額な財政赤字や貿易赤字は、アメリカの未来にとって有益である。」「愛国者法は、我々に自由を与えてくれる。」「『地球温暖化条約』への署名拒否は、環境にとって良い。」「核兵器の開発は、核兵器拡散を抑止する。」「エネルギーや、911事件、イラク情報に関する秘密保持法は、民主主義にとって良い。」

そして、「私は、史上最高の大統領だ」ということも…。

=====================





 

 

2003年08月21日

 

 ホーム

ツイート

 

millnm@path.ne.jp