会社員は景気や業績上昇からの余剰利益をあきらめるべき2


<Q>
安倍政権が推し進めようとした残業代ゼロ法案は、御手洗経団連が強く要望しているものだし、そのくせ、キヤノンは自社の役員報酬は大盤振る舞いしている。 キヤノンは偽装請負でも問題になった。(略)
御手洗氏は、経済財政諮問会議で「請負法制に無理がある」「見直して欲しい」と居直った。

悪いのは法律だというのである。 人格、品性を疑ってしまうが、
そんなのがサラリーマンいじめの労働基準法改正に旗を振り、
消費税を10%引き上げ、代わりに法人税の実効税率を10%下げろとか言う。

身勝手もいい加減にして欲しい。(略)

極め付きが今年の春闘についての発言で、
「生産性と関係のない方法による賃上げでは日本は世界に負けていく」などと言い、 事あるごとに賃上げに冷水をぶっかけているのだ。 財界総理がこんな調子だから、どこもかしこも安心して、賃上げを見送ろうとしている。

NHKの調査(大企業と全国の中小企業が対象)では「賃上げを検討している」はたった3%だった。

<A>
(1)
企業が残業代ゼロにせよ、というなら、残業をさせてはならない。
なぜならば、企業は8時間労働という契約を労働者と結んでいるから。
余剰に労働させるなら、その分の賃金を払うべきである。

「残業をするのは本人の仕事が遅いから」というだろうか。
それならば、本人と相談して本当に規定時間内にこなせる労働内容なのか、決定すればよい。

もし労働量が多くて規定時間内で収まらない場合は、残業代を払うべきだ。

(2)
「生産性と関係のない方法による賃上げでは日本は世界に負けていく」
という主張はもっともである。

労働組合は、「物価が上昇しているから、賃金を上げろ」という要求をする。要求をすること自体に文句はないが、しかし、市場経済において、会社の収入は、物価などの従業員の境遇とはまったく関係がないことを認識すべきである。

会社が仕事を他者からもらえるかどうかは、物価が高くて、会社の社員の生活が苦しくなっているかどうかとはまったく関係がないのである。

会社が仕事を取ってこれて、従業員に給料を払えるのは、会社が市場において「魅力的なサービスや商品を提供しているから」だけである。

労働組合がベースアップを要求するような論法を用いて、会社の営業マンが「今物価が上がっているので生活が厳しいのです。だから仕事をください。」といえるだろうか。

こんな会社は、市場経済の中においてやっていけない。やっていけるのは、会社が作り出すサービスや商品が、他者にとって魅力的であり、それを手に入れたいと思わせられているから「だけ」である。

フリーランスをしていると分かることだが、発注元はこちらの都合など考えない。こちらがどんなに生活が苦しくても、仕事を回すか回さないかは、「こちらに回す必要性が発注元にある場合のみ」である。

御手洗氏をトップとする産業界が「業績と無関係な賃金アップや人件費」を拒否するようになったのは、高度成長経済の時代のように、右肩上がりの経済ではないということであり、実際の業績と密接に連動するような労働賃金の体系を作らない限り世界市場では生き残れない、という厳しい状況があるからである。

日本市場を開放するならば、世界と戦わなければならないので、非現実的・共産主義的なものはことごとく淘汰されていくだろう。

ベースアップなる共産主義的な考えも、世界との戦いの中において消えていくだろう。

(3)
日本の知識人・企業家・労働者は、まだ共産主義的な考えから抜け出ていない。

今労働者を苦しめているのは、「成果主義」という厳しい現実によって、かつて受けていた「正社員」の恩恵がどんどん削り取られていることにある。

しかし、これは、市場経済の現実であって、最初から認識すべきものである。

社員や従業員の給料は、「会社が市場において成果を上げている場合だけ」支給される。彼らはそれに甘んじるべきだ。

問題は、労働者の厳しい現実に、税制が追いついていないということである。

まだ、国民の間に福祉国家の夢がある。

国に金を集め、それを官僚の選択によって再分配するというシステムは、無駄の多い費用対効果の低いシステムである。これまでいかに無駄なところに税金が使われてきたかを見れば分かるだろう。

つまり、解決は、税金を安くし、社会保障を廃止して、国民が自分の金を自分で管理できるようにすることである。

そうすれば、官僚らによる無駄遣いはなくなる。人々は、自分が稼いだ金を自分の責任で使うようになる。

これだけが、国際化され、市場経済のジャングルの中に投げ込まれる日本において許される唯一の体制である。

福祉国家を保ちながら、しかも、市場経済のジャングルの中を生き延びなければならないとすれば、当然街中に浮浪者が溢れることになるだろう。

 

 

2007年3月18日

 

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