クリスチャンは中途半端な理解のままに政治をやるな


キリスト教に通じていない人は分かりにくいだろうが、今の宗教右派は、2つの相反する思想を同時に信奉している。

(1)ディスペンセーショナリズム
(2)再建主義

(1)
ディスペンセーショナリズムは、終末論においてユダヤ教の原理をひきずっている。

それは、「武力によるイスラエル王国の建設とそのイスラエル王国を中心とした新世界秩序の建設」である。

ユダヤ教(旧約聖書の宗教とは異なる)はメシアをローマ帝国からの解放者と見ていたため、政治的メシアになることを拒否したイエスを殺害した。

ディスペンセーショナリズムは、キリスト教の中から生まれたから、イエスをメシアとして受け入れるが、終末に再臨されるメシアが武力によって世界統一するという考えを持っているという意味でユダヤ教と原理(武力による支配)は一致している。

しかし、歴史的キリスト教は、「支配とは武力によらず、聖霊による」と考える。つまり、「伝道とともに働く聖霊が一人一人の心を変えて、イエス・キリストに従う心が与えられ、それらの人々が世界を『教育と伝道によって』変えていく」と考える。

これは天と地ほどの違いである。

(2)
再建主義は、歴史的キリスト教の立場であり、世界を変える方法は、再臨のメシアによる外発的武力支配ではなく、聖霊による内発的自発的支配である、と主張する。

しかし、このような教理的な違いについて知らない人々が、再建主義のエレメントである「統治主義」を誤解して、「武力による統治を目指す」と誤解し、我々のことをネオコンと同一と勘違いしている。

今回のイラク戦争において、ネオコンとつるんだのは、ディスペンセーショナリストである。

その典型的な人物がTV伝道者で大統領選挙に出たこともあるパット・ロバートソンである。

彼は、ディスペンセーショナリズムを信じつつ、再建主義の一部を取り込んで独自の見解を作り出した。

そして、アメリカクリスチャン同盟という団体を通じてブッシュ大統領に影響を行使し、今回のイラク戦争を後押しした。

私は、彼らがイラク戦争を支持した時に、アメリカクリスチャン同盟に抗議文を出したが無視された。

(3)
ディスペンセーショナリズムを信じながら再建主義の教義を取り込むことによって、パット・ロバートソンは人々に再建主義について間違ったイメージを与えただけではなく、「クリスチャンが政治に口を出すとろくなことはない」という印象を人々に与えた。

福音的キリスト教が人々にこのような印象を与えたのはこれがはじめてではない。彼らは、間違った聖書解釈によって「飲酒の完全禁止」を主張し、それに基づいて禁酒法成立に影響を与え、国内を混乱させ、闇取引を行ったマフィアの勢力を拡大させた。

福音的キリスト教の大きな間違いは、「聖書が何も言っていないことを頑固に貫く」という点にある。聖書が何も言っていないことを頑固に主張することは実質的に別の宗教(つまり、カルト)を作ることなのである。

彼らが政治に関与するとろくなことができないのは当然である。

この薄っぺらな宗教は人々を変えることも社会を変えることもできない。聖書と社会について浅薄な思考しかできない人々が政治に関与することによって、人々に大きな誤解を与え、キリスト教離れを促進している。

再建主義を取り入れるなら、まず全部をよく検討してからにして欲しい。その武力覇権主義を捨てないままに政治に関わると「結局、キリスト教と政治とは無関係なのだ」という間違った思想をさらに促進させ、聖書の真理を捻じ曲げることになる。

 

 

2004年5月6日

 

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