アメリカクリスチャン選挙民はまた騙されるのか?
友人があるアメリカ人宣教師とイラク戦争について対話した。
宣教師は、「たしかにアメリカは、イラン・イラク戦争においてイラクを支援し、フセインを育てた。これは問題だ。しかし、フセインはその後増長して、独裁者になり、悪を行ない、世界の脅威となった。だから、イラクを叩く必要はあった」と述べたという。
アメリカの公式見解を鵜呑みにした稚拙な意見である。
悪者退治のためだけに、一国が戦争をやるか?
911事件とイラクの関係を証明することも、大量破壊兵器を見つけることもできないままに見切り発車したことをどう説明する?
差し迫った理由以外のもので戦争をはじめたことくらい明らかではないか。
もし悪者退治のために戦争をするなら、世界にはそんな国はごろごろしているわけだから、アメリカはそっちもやるのか?これから、世界の警察官として、独裁国家を次々と叩くつもりなのか?
実際の問題は、石油である。だから石油がない国には見向きもしない。
アフガニスタンを制圧したのは、この国が地政学的に非常に重要だからだ。中近東一体にプレゼンスを確立するには、アフガニスタンを取ることは必須である。
前にも述べたが、アメリカの政治は極めて不可解であり、複雑である。ある人は、政権内部の中道派とネオコンとの対立で見ようとするが、しかし、中道派とネオコンは同じ会議のテーブルについている。
単純な権力闘争の図式を期待すると裏切られる。歴史的に、アメリカの情報戦略は、「観察者を煙に巻く」というところにある。だから、しっかりと流れを見ようとする専門家が見ると解釈に苦しむ政策がところどころにちりばめられている。
しかし、対国民に対しては、きわめて単純な図式を描く。テレビのニュースに登場する場合、共和党と民主党の対立という単純な構図を作り出す。自由主義対共産主義、自由主義対テロリスト、こういった単純な二元論的な図式を作って、ハリウッドの勧善懲悪の映画のような分かりやすい構図を描く。
こんな公式見解を真に受けて、政治の世界を見ることなどできない。しかし、テレビなどに出てくる評論家は裏読みをせずに、それらをそのまま受け取って、「国際テロ組織との対決に日本も貢献すべきだ」などといっている。
ブッシュとケリーの力関係は、今回のロシア学校占拠事件で、ガラッっと変わった。テロリストとの戦いを前面に出していたブッシュが俄然有利になった。
テロリストの中にアラブ人が含まれていたそうだ。そして、国際テロ組織との関係があるとの報道もあった。
まさに、「いい時に出てきてくれた」じゃないか。
「アメリカは、一致してイスラム原理主義テロリストに対抗する用意がある」と、ブッシュはプーチンにエールを送ったそうだ。
アメリカの選挙民は、馬鹿にされているのだ。
いいカモにされているのだ。
スーパーマンやスパイダーマンなどのハリウッドの勧善懲悪映画を見慣れた選挙民は、国際社会対テロ組織という分かりやすい図式を見せられ、ブッシュをこれらの映画のヒーローと重ね合わせるように誘導され、「テロリストとしっかりと戦ってくれよ」と念じながら投票所に向かうように仕向けられる。
BSでやっていたフランス製のCIAの特集番組で、かつてCIAの高官だった人物がはっきりと言った。
「政治工作は、国益を守り、それを増すための正当な手段である。」と。
つまり、他国の政治に内政干渉して、要人暗殺したり、革命活動を支援することは、アメリカを利するための正当な外交的手段であると、公言したのである。そして、戦争とは、その政治工作が表面化したものに過ぎないのであると。
これがCIAである。
「世界から脅威を除く」なんてのは、国民の良心を落ち着かせて、戦争に駆り立てるための方便である。
選挙民の最大の義務とは、「政治家の第一の敵は選挙民である」ということを理解することである。政治家は、まず国民を騙すことができなければ、対外的な敵と戦えない。為政者は、味方を欺く天才でなければならない。
主権在民を謳う国家の選挙民は馬鹿では務まらない。政治について独自に情報を集めることをしない「善良な」アメリカクリスチャンは、世界の運命を左右する選挙民としてはまったく不適格である。
2004年9月5日
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