成功を最も恐るべき罠と考えよ
よく誤解されているようだが、人間にとって恐ろしいのは失敗よりも成功である。
敗戦よりも戦争に勝つことのほうが恐ろしい。
貧乏になることよりも裕福になることのほうが恐ろしい。
なぜならば、人間は成功したり戦争に勝ったり、お金持ちになると傲慢になり、反省することができなくなるから。
お金持ちや成功した人々に訓戒の言葉は通じない。彼らに忠告できるのは、彼らが尊敬するごく少数の人々だけである。成功者は、自分のやり方が絶対だと思うようになるから、時代の変化に取り残される。
日本の太平洋戦争の大失敗の原因は、日清・日露戦争に勝ったことである。あれで軍部の発言力が増し、国民は傲慢になった。朝鮮併合も、その後の日中戦争も、傲慢の結果である。
日露戦争で活躍した軍人が軍部で幅をきかせ、いつまでも軍艦戦にこだわったため、航空機重視に移行していた世界の潮流に乗り遅れた。
傲慢の恐ろしさは、反省のチャンスが少なくなり、それだけ致命的な失敗をする可能性が高まるという点にある。
ペテロは、イエスが「私は十字架につきます」といわれたときに、「先生、そんなことはありませんよ。」と言い、「あなたは私を裏切るだろう」と言われたときに、「けっしてそんなことはありません。」と言い切った。
イエスに対して「私はあなたを裏切りません。」と断言することによって、彼は「私はあなたの支えなどいりません。自分だけでやっていけます。」と言ったのだ。神の支えがなければ一瞬たりとも生きていけないにもかかわらず、その支えを拒否した。
結局、彼はイエスの見ている前で、イエスを裏切り、泣いた。
彼の失敗の原因は傲慢にあった。
神は人間が高ぶらないように、思わぬところで失敗をさせられる。通常ならば何なくこなせた仕事で大失敗をすることがある。
それは反省のチャンスを与えるためである。それによって、我々は、どんなに力のある者でも神の支えなしには何もできない、ということを悟るべきである。
だから、我々は常に、成功した場合には、「主のおかげで・・・できました。」といえるようにならなければならない。
人に褒められたならば、「わたしではなく、主のおかげです。」と言う癖をつけるべきである。
連戦連勝の真の強者は、傲慢にならないための精神的なコントロールに長けている。
本当の金持ちは、どんな人の意見にも謙虚に耳を傾ける。
牧師が、「牧会生活40年のわたしが・・・」とか「みなさんが救われたのも、私が孤立無援で伝道してきたからですよ」などと言い出したら、破滅が目前に近づいている兆候である。
我々などいなくても、神の国は進展するのだ。我々が用いられたならば、それは純粋に恵みによる。神は、私でなくても、誰か他の人を起こして事を行われる。
外国の選手で勝利の後にひざまずいて祈る人がいる。
彼らは、成功こそ最も恐るべき罠であることを聖書と体験から学んだ賢者である。
2004年8月16日
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