カルヴァン主義はユダヤ教に影響されてできた?
最近、カルヴァン主義はユダヤ教の影響を受けており、近代資本主義の精神は、純粋なキリスト教によるのではなく、ユダヤ教の影響を受けたカルヴァン主義による、という意見が出始めた。
まず、基本的な間違いを指摘する。
旧約聖書の宗教とユダヤ教を混同してはならない。
カルヴァンは、旧約聖書の宗教の影響を受けているのは間違いない。
なぜならば、カルヴァンは、旧新約聖書を正典として認め、それを神の言葉として受け入れていたからだ。
カルヴァンは、旧新約の一貫性を強調した。ルター派が、旧新約の違いを強調したのに対して、カルヴァンは正しくもそれは同じ神の言葉であり、調和しているとした。
プロテスタント神学は、ここにおいて旧約の神と新約の神を違うものとして区別するマルキオン主義の異端から逃れることができた。(*)正統主義は、旧約と新約の一貫性を保持していた。
カルヴァンがこの一貫性を強調し、旧約律法を肯定したのは、ユダヤ教の影響でそうしたのではなく、それまでのキリスト教の正統的神学に従ったからにすぎない。
仮にユダヤ教の影響でそうしたというならば、カルヴァンは、律法を教会に教えなかったはずだ。
なぜならば、ユダヤ教は「律法はユダヤ人だけに与えられた。」とし、「律法を学ぶ異邦人は死に値する」というラビ(マイモニデス)すらいるからだ。
この矛盾をどのように解決するのだろうか。
カルヴァン主義をユダヤ教と混同するという稚拙な間違いをすると、今頭角を現してきた学問の一派にとって致命的な評価となり、歴史学界からも正統的キリスト教会からも相手にされなくなるので注意されたし。
(*)
今、福音派をはじめとするキリスト教の一般的な思想的傾向は、ディスペンセーショナリズムの影響を受けており、ディスペンセーショナリズムは、マルキオン主義である。旧約の神を怒りの神、新約の神を愛と赦しの神として区別する傾向があり、現代において律法は適用されないと説く。マルキオン思想は次のとおり。
反駁者たちの文章から推測されるマルキオンの思想は次のようなものである。まず、イエスはユダヤ教の待ち望んだメシアではなく、まことの神によって派遣されたものである。ユダヤ教の期待するメシア像は政治的リーダーで異邦人を打ち破るという要素が組み込まれていたことがマルキオンには誤りと思えたのだ。また、神が人間のように苦しむはずがないとして、イエスの人間性を否定した。このようにイエスの人間性を単にそのように見えただけだとする考え方を仮現説(ドケティスム)という。
同時に彼は旧約の神(世界を創造した神・律法神)は、怒りの神、嫉妬する神、不完全な神であり、旧約の神がつくった世界は苦しみにみちた世界であると考えた。一方、イエスの示した神は、旧約の神とは異なるまことの神、いつくしみの神であると唱えている。
このことから、マルキオンはキリスト教徒にとって旧約聖書は必要ないと考え、自分たちのグループのために本当に必要な文書のみを選択しようとした。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%82%AA%E3%83%B3
2009年5月18日
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