世界に悪影響を及ぼすプレ・ミレ終末預言
1970−80年代、私がプレ・ミレだった頃、「大変だ。この大切な教えを一人でも多くの人に伝えなければ。そのためなら何でもしよう」と考えていた。
ソ連の石油涸渇、EC十カ国、反キリストと思われる人物・・・
終末の前兆が起こっていると考えたからだ。
大学の文化祭で、特別ブースを設けて展示をし、研究発表をした。
「なぜ終末は近いか?」というテーマで。
来訪者に、マタイ24章の前兆である「地震、ききん、不法、異常気象・・・」が今の時代にぴったりと当てはまる、と説明した。
あれから4半世紀である。
世界情勢は大きく変化した。再臨が今すぐにでも起こると思わせた様々な状況は、まったく変わった。
ソ連は崩壊し、ソ連の石油資源も枯渇せず、ヨーロッパ連合も10ヶ国をはるかに超えて拡大している。ある伝道者が反キリストだと述べたクライスキーやミッテラン、その他の政治家も死んでしまった。
アラブ諸国・エチオピアなどとロシアとの関係もソ連崩壊後大きく変化した。
あの当時プレ・ミレが主張したことはことごとく外れてしまった。
ハル・リンゼイは1989年に携挙が起こると示唆したが、何も起こらなかった。日本の著名な伝道者たちもそれと類似したことを述べたが、同じように完全に外れた。
私は、1989年にこのような預言解釈が間違いだと気付いて、ポスト・ミレに転向した。
同じように、他のプレ・ミレの人々も立場を変えるかと思ったが、そうではなかった。
彼らはまだ終末が近いと叫んでいる。
マイナーな修正にとどまっているならまだしも、すでに述べたように、プレ・ミレの終末預言の内容は根本的なところにおいて大きく変わり、今彼らが述べていることは、以前と比べると、まったく別物である。このような全面的な変化があったのだから、プレ・ミレの人々は、自分の意見を変えたことを公表し、以前自分の偽預言によって道を踏み誤った人々に対して公的に謝罪すべきだ。
書物に出して発表した人は、書物において悔い改めるべきだ。
公的な罪は、公的な場所で悔い改めるべきだ。
そうしないと、過ちが繰り返されて、いっこうに進歩しないから。
韓国において、牧師がキリストの再臨の時期を設定して、会衆が一堂に集まりその時を待ったが外れたという事件があった。信者を騙したということで社会的な制裁を受けた。
しかし、世界の教会の講壇から再臨が近いと述べた人々や、書物として切迫終末を唱えた人々には、何のお咎めもなしだ。
だから、彼らは内容を密かに変えて、今でも同じような預言本を出している。クリスチャンの社会が「寛容」なので、まったく懲りていないわけだ。
再臨信仰は、ますますファナティックになり、その間違った影響は拡大し、アメリカの大統領すら動かしている。
聖書においてアブラハムに約束された領土を回復するために、という理由で、アメリカのプレ・ミレ信者は、イスラエルによるパレスチナ人の領土への侵略を肯定している。
イスラエルとパレスチナが今の境界線で落ち着けば、再臨は遠のいてしまう、というので、紛争を肯定している。
偽預言が、カルト集団の内部での信仰にとどまっていれば危険性は低いが、彼らが外に向かって行動すれば、恐ろしい結果になる。
オウムのハルマゲドンの教義がサリン事件を生んだように。
教会が自分を裁かず、偽預言を放置した結果、教会は「平和をもたらす者」(マタイ5・6)ではなく、世界を戦争と災厄に巻き込む者となっている。
アメリカのプレ・ミレのクリスチャンたちは、再臨を早めるために、ブッシュの再選を支持し、イラク戦争のような、イスラエルとユダヤ人による世界再編戦略にこれからも荷担することになるだろう。
プレ・ミレの聖書解釈、イラク戦争支持などの悪に対して警告した人々を無視した結果は重大なものになるだろう。
悪霊にすっかり騙されている人に何を言っても通じない。
アメリカクリスチャン同盟に何度かメールを出してもなしのつぶて。
今のプレ・ミレの教会とクリスチャンは、正当な批判に耳を傾けなくなっている。これは非常に危険な徴候である。
もしかして、神が彼らを裁くことを決定されたからなのかもしれない。
「『人がもし、ほかの人に対して罪を犯すと、神がその仲裁をしてくださる。だが、人が主に対して罪を犯したら、だれが、その者のために仲裁に立とうか。』しかし、彼らは父の言うことを聞こうとしなかった。彼らを殺すことが主のみこころであったからである。」(1サムエル2・25)
2004年9月1日
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