日本の市民運動を停滞させた元凶


(1)
戦後のリベラリズム運動の基本的な弱点は、「無規範主義」「無律法主義」「無国境主義」「無政府主義」にある。

ベトナム戦争反対、イラク戦争派兵反対、大学当局による学生自治への介入反対、消費税導入反対・・・と叫ぶ人々が失敗してきたのは、一般の人々の「それじゃあ、何が基準なの?」という疑問に答えることができなかったためである。

一般の人々は、彼らの主張を聞いて、「自由を!と叫ぶのはよいが、男女の性区別(差別ではない)を撤廃したり、外国人を都庁の管理職につけたりするのはどうかと思う」と感じているのである。

つまり、「あなたがたは私たちをどこに連れていくのですか?」と不安に思っているのである。

「表現・報道の自由を守れと主張するのはいいが、ポルノの解禁まではねぇ・・・」と及び腰になっているのである。

現代のリベラル運動の失敗の原因は、リベラリストが、マルクス主義無神論に影響されて、道徳や社会規範に関してアナキストになったことにある。

抑圧から人々を解放した後で、明確な秩序の青写真を提示できなかったことにある。

(2)
昔、学生時代にクラブの部長をしていた時に、クラブ棟の移転に伴う部室確保運動に参加したことがある。

大学当局側が提示した条件は、旧クラブ棟での部室の条件よりも悪かった。左翼運動を警戒するため、部室の壁は取り払われ、ついたてだけで仕切られた部屋が与えられた。

そこで、きちんとした壁で仕切られた部屋をもらえるようにサークル全体で連合を作り、集団交渉したのだが、サークル連合自身に問題が生じた。

外部の政治団体が運動に入り込み、政治運動化したからである。

ただの部室移転問題が、三里塚闘争、民青との対決など、我々とはまったく無縁の問題に摩り替わっていった。

その政治団体に属する学生たちは新サークル棟を不法占拠し、ついに機動隊が来て、排除された。

運動の当事者であるはずの我々を置き去りにして、問題だけが一人歩きし、自滅した。

市民運動を破壊してきたのは、運動を利用して自分の団体の覇権を拡大しようとする左翼組織のエゴである。

マルクシズムは、対立などそもそも何もないところに無理やり対立を作り出して平和を乱す悪魔的思想である。

左翼運動によって、日本社会の中にどれだけ相互不信が生まれたことか。

我々が欲していたのはただ通常活動ができる部室である。ついたて一つでは、クラブ活動の内容が隣のクラブに聞こえてしまうし、こちらにも隣のクラブの様子が伝わってきて落ち着かない。そういった不都合を排除したいというただそれだけなのだ。

しかし、左翼系政治団体の分子たちはそれでは納得がいかなかった。部室問題を利用して、学内における自分たちの覇権を拡大しようとした。

平和運動や普通の市民運動を妨害する本当の敵は、それらを自分の党や組織を拡大するためのステップにしようともくろむ愚かなセクト主義者である。

(3)
今、役人や政治家などは自分の国を自分で掃除できなくなっている。どんどん積もりに積もった借金をさらなる増税によって解消しようとしている。

まず、今の国のグランドデザインそのものを疑って、それを改革しなければならないのに、弥縫策で乗り切ろうとしている。

このような国家の危機的状況にもかかわらず、市民運動は盛り上がらない。

なぜか。

疲れてしまったからだ。

何をやっても、左翼運動家が横から忍び込んで、共産党と内ゲバをやったり、不法占拠をやったり、リンチをやったり、とにかくあらぬ方向に運動をひっぱるので、運動を起こすことそのものに疲労感と無力感を感じているからだ。

健全な運動を始めるには、(1)古い体制の後にくる新しい体制の実効性を示すこと、(2)セクト主義を持つ特定の政治団体の影響を排除することが必要だ。

 

 

2005年1月27日

 

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