真の偽造犯は国である
昔家庭教師をしていた子供の父親が大蔵省の幹部で、ある記念金貨を発行した人だった。
この金貨には金の価値の上にかなりのプレミアをつけたため、偽造が出回り問題になった。
紙幣と違って、金属貨幣は、鋳型さえあれば、簡単に偽造できる。500円玉は、同じような重さの金属を鋳型に流し込めば簡単に量産できる。
事実、(方法は鋳造ではなかったが)全国で類似貨幣による自動販売機荒らしが起こったのは、記憶に新しい。
国は、偽造貨幣を厳しく罰するし、国民もそれを糾弾するが、しかし、一番偽造貨幣を製造しているのは国そのものなのである。
なぜならば、現在発行されているお金は、貴金属などの実体の裏打ちがないからである。
神は、「不正なはかりと、欺きの重り石の袋を使っている者を罪なしとすることがわたしにできようか。」(ミカ6・11)といわれた。
「不正なはかり」とは、たとえば、実際には1.5kgしかないのに、2kgの表示をつけて米を売るようなものである。
これは、実体のないものを実体があるかのように見せかけて売り渡すことであり、詐欺罪だ。
政府が発行しているお金も同じである。紙幣に裏打ちが必要であり、たとえば、その紙幣がいつでも金と交換できるというような紙幣であれば、実体の裏打ちがあるので、政府は自由に発行できないが、その必要がないのだから、どんどん自分の裁量で自由にお金を発行し、流通量を支配できる。
これは、「無から価値を創造する」という神だけが行える奇跡の横取りである。
実際に国は神ではないのだから、そんなことはできない。となると、どうなるか。インフレである。
実体のないお金だけが市場に出回れば、お金の価値は低く見積もられて、相対的にものの価値が上がる。
お分かりだろうが、これは、偽札が出回ったのと同じ効果である。
しかも、たちの悪いことに、国は大量の実体のないお金を発行することによって、インフレを起こし、それによって、自分の負債を減らすことができるのだ。
たとえば、40年前にアンパンは1個10円で、今は100円であるからこれだけを基準に比較すると、金の価値は10分の1に落ちたということだ。
40年ローンというのはあまり聞いたことがないが、当時1000万円の借金をして家を建てた人が今返済すると、100万円で済むということになる。政府はお金を発行する権利を独占することによって、自分の負債を減らすことができるのだ。
お金の自由発行には2つのうまみがある。
(1)労働を経ずに金を好きな時に好きなだけ手に入れることができる。
(2)借金を棒引きできる。
20世紀になってから世界の国家は「お金の独占的発行権」という魔法の杖を振り回してきた。
国家は偽造犯を逮捕し裁いておきながら、同じ罪を犯している。
もちろん、国もバカではないから、自由に大量にお金を刷って、国の経済を混乱させるようなことはしない。しかし、長い目で見れば、国富の増加とは不釣合いにお金の価値は確実に下がっている。
我々は、国家といえども実体のないお金を作る権利を許してはならない。そうしないと、神はこの罪を裁かれる。
「まだ、悪者の家には、不正の財宝と、のろわれた枡目不足の枡があるではないか。」(ミカ6・10)
2004年6月8日
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