日本は十字架の国である
朝日新聞2005年8月5日に、原爆をテーマとした作品展を日本で開いたオーストリア人画家アーヌルフ・ライナー氏の作品が紹介されていた。
その中に、きのこ雲の上に十字架が描かれている絵があった。氏曰く、
「気がつくと、きのこ雲の上に十字架を描いていた。遺体の山にはクローンの絵の具を何度も塗り重ね、真っ黒になった」
私はこの絵を見たときに少し驚いた。というのも、最近、原爆は日本にとって十字架だったのではないかと考えていたからだ。
もし原爆投下がなければ、本土決戦になっていただろう。そうなれば、戦争による被災者は300万人に留まらず、ドイツやポーランドなど国土が戦場になった国のように、700万人程度が戦死したのではないかと言われている。戦場となった国土は回復できないくらいに荒廃したことだろう。
アメリカは、原爆投下によってソ連を牽制することに成功し、そのため、スターリンによる北海道の分割支配を防ぐことができた。
日本は、広島・長崎の被爆者の犠牲の上に国土を守られ、再生できたと言っても過言ではないだろう。
そして、さらに、世界の人々へのアンケート調査により「広島・長崎の犠牲は、核兵器の使用を踏みとどまらせるブレーキの役割を果たしている」と考えている人が多いことが分かっている。
このように考えると、広島・長崎の被爆者、そして、敷衍するならば、唯一の核被爆国である日本は、世界の他の国民が核兵器の犠牲にならないための防波堤の役割を果たしていると言えるかもしれない。
日本は世界にとって十字架の国なのだと思う。
「しかし、彼らのうちのひとりで、その年の大祭司であったカヤパが、彼らに言った。『あなたがたは全然何もわかっていない。ひとりの人が民の代わりに死んで、国民全体が滅びないほうが、あなたがたにとって得策だということも、考えに入れていない。…』」(ヨハネ11・49-50)
2005年8月19日
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