金持ちが裕福になることによって不況が起きる?


1.
累進課税制度賛成論者は、累進課税を撤廃すれば、金持ちや法人を優遇することになり、逆進税になるというが間違い。

同じ率で課税するのだから、優遇していることにはならない。平等だ。「法の下において平等」という原理を適用せよと我々は言っているだけ。

2.
賛成論者は、次のように言う。


先進国の市場経済では、需要が生産活動の中心に位置するので、消費が鈍ると生産活動も停滞し、不況になり、大恐慌も起こる。

資金の市場での循環を止めないためには、需要を作り出す必要があるが、それを担っているのが累進課税制度である。

なぜならば、需要は主に消費者支出に左右されるからだ。

高額所得者の所得上昇率は貧困者のそれよりもはるかに高いのにもかかわらず、その所得に占める消費の割合は、貧困者のそれに比べてはるかに少ない。金持ちの数が相対的に少ない上に、金持ちは金を使わず溜め込む傾向があるからだ。

高額所得者がどんどん所得を増やしても、需要に結びつかないから、それだけ「眠り金」が増え、市場に金が流れない。

その反面、貧困者の所得上昇率は鈍いため、こちらでも需要の押し上げは起こらない。

この結果、資金の市場循環は停滞し、不況に陥る。

累進課税制度は、高額所得者の金を市場に強制的に注入する手段である。

本当だろうか?本当に金持ちの蓄えた金は「眠り金」になるのだろうか。

私の理解では、金があれば、それは投資に回される。それが銀行に蓄えられているものであっても、個人として株式に投資されるものであっても、何かに投資される。たんす預金でもしない限り、金はほとんどが市場に流れる。

金持ちの金を預かった銀行は、それを企業に貸し出し、国債を買い、株式などを買い、そこから利益を得ようとする。眠り金にはならないのではないだろうか。

私は、市場における資金の循環をストップしている本当の原因は、国の非効率、非合理的な資金の分配にあると思う。

つぶさなければならないような非効率な会社が、政治力によって生き延びている。数年で完成するダムが50年たって、3000億円も使いながら着工すらされない。

国による人為的な所得の再配分によって無駄なところに金が回り、必要なところに金が回らない。これが、市場における資金の循環を鈍らせている主な原因ではないだろうか。

賛成論者は、資金の停滞の本当の原因が国による過大な徴税にあるという事実を見ずに、その責任を高額所得者とその成功に転嫁している。

この、国によって再配分される資金の量を著しく制限し、国の手を通さずに資金が市場に回るようにすれば、何も金持ちに累進課税しなくても、需要は増大する。

この賛成論には巧妙なトリックがあるように思える。

 

 

2009年10月12日

 

ツイート



 ホーム

 



millnm@path.ne.jp