主権は徹底的に神にある
我々はどんなに努力しても、自分に与えられた生まれながらの能力の制限を受けており、不可能なことがある。
「同じ人間なのだからできるはずだ」というのは間違いである。
神はそれぞれに能力の分け前を与えられた。
その能力の大きさは、平等ではない。
そして、人間は誰でもこの能力の範囲内で生きなければならない。
努力して伸ばせるのは、その能力が潜在的にある場合である。
例えば、我々がボルトのように100m9.6秒で走ることは不可能である。努力しても何をしても無理である。
それは神が我々に与えられた限界である。
人それぞれに能力の分与があり、それによって、社会を形成し、自分に欠けた部分を誰かほかの人にやってもらい、自分ができることを他の人のためにやるように、神は、そういう分業を前提として世界を作られたのだ。
だから、文明の発展とは、分業の高度化である。
人間が互いにできるだけ生産的な分野に集中して、この短い人生の間に自分に与えられた才能を活かし、できるだけ多くの仕事をすることが御心なのだ。
では、自分が何に向いているのか、という問題だが、それは、やってみることだ。
自分に向いている職業は何かは、やってみて分かる。
やる前からかなり分かる場合もある。
例えば、自分が格闘家に向いているかどうか、私は絶対にそのような才能がないとやる前からわかる。
しかし、私が、自分が学者に向いているとたとえ思ったとしても、どのような学問をやり、どのような研究をするのが向いているのか、フィールドワークに向いているのか、研究室で研究するのが向いているのか、やらないと分からない場合が多い。
普通の場合、若い時代は、このような試行錯誤のためにある。
自分に与えられた使命を確立するまでの間、やってみるために青年時代がある。
もちろん、最初から分かっている人もいるかもしれないが、大部分の人はそうではない。
だから、仕事を変えることは恥ずかしいことでも何でもない。
仕事を変えると落伍したように考える人が日本には多いが、まったくの間違いだ。
最近はこういう考え方から自由な考え方に変わってきた。いいことだと思う。
さて、私の経験では、このように、我々人間は神の決定に徹底して縛られている。
誰と何歳で結婚するかとか、どの仕事、どの職場に行くかとか、どのような子供が与えられて、どのような道をたどるかなどことごとく決定されている。
正直言えば、神の許しなしでは、100m先のコンビニに行くことすらできない。
いかに人間の目で可能に見えても、必ずしもそのとおりに行くとは限らない。
逆に神の許しがあれば、不可能に見えることも可能になる。
私は、経験を積めば積むほど、こういった神の決定に我々が左右されているとますます強く思うようになった。
学生時代、同じ志を立てて信仰をともにして、同じ意見を持っていた友人に会って、まったく変わってしまったのを見た。
カルヴァン主義を教えてくれた人がバルト神学になっていた。
ヴァン・ティルを紹介してくれた人が、ヴァン・ティルと無関係な考え方になっていた。
このような時、我々は、「説得すれば、何とかなる」と考えやすいが、私はほとんどの場合、失敗すると思う。
人間は変わらない。
私のメールを10年間受け取り、内容をよく理解していた人が、まったく別の考えに変わってしまい、それまで学んだことがまったく何の役にも立っていなかったのを知って、愕然としたことがある。
これを「説得の努力が足りなかった」と考えることもできよう。
たしかにそういう場合もある。
しかし、どんなに口をすっぱくして言っても、無理なものは無理なのだ。人が何を考え何を信じるかは我々の能力外の問題だ。
神は、その人の信仰の程度を決定しておられる。
肉体的、知的能力が決定されているのと同じように、信仰も神の割当てがある。
その割当てはどうしようもない。
自分が悟りを与えられて、光を示されたからといって、それを他の人も受け取れるかというとそうとは限らない。
私は、「この考えを受け取れるように信仰の割当てをされている人だけが受け取れる」と考えている。
信仰を受け入れる者、それを拒絶する者、それを発展させる者、それを捨てる者、逆に攻撃する者、迫害する者、こういったすべてのことを神が決定されている。
だから、信仰を自分が捨てないですんでいるのは恵みなのだ。
永遠の地獄に落とされるような誤謬を信じることを許された人には気の毒だが、しかし、我々にはどうしようもない。
神の側の役割分担がそのようなのだから仕方がない。
あれだけ我々に信仰を教え、ともに伝道した牧師や伝道師や信徒が、堕落し、信仰を否定するのを何度も見聞きしてきた結果、我々が正しい信仰に導かれ、それを維持できているのは、神の恵み以外の何物でもないと感じる。
主権は徹底的に神にあるとつくづく思う。
2008年10月28日
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