ブッシュはある意味で成功した政権であった
ブッシュ大統領の政権が終わろうとしている。
ブッシュ大統領は、失敗した大統領だと言われる。人気はどん底だ。
無能の烙印を押されて終わろうとしている。
しかし、考えようによっては、実にたくみに仕事をこなした。これほど成功した大統領はいないのではないだろうか。
何について?
キリスト教と福音派(ファンダメンタリズム)のイメージをダウンさせたという意味で。
彼は自分をクリスチャンだと述べ、そして、イラク戦争を行った。
キリスト教や福音派について知らない人々は、「クリスチャンはこんな野蛮なことをするのか」と誤解した。
たしかに、福音派の中にも、世界を武力的に支配することに賛同する人々がいる。プレ・ミレのディスペンセーショナリストたちである。
しかし、それは、本流ではない。
たしかに福音派の大多数を占めているが、もともと福音派にはディスペンセーショナリズムという思想はなかった。
これは、19世紀のはじめに現れた異端思想である。
ダービーとスコフィールドによって世界中に広まり、教会に浸透した。
この2人は非常に素性が怪しい人々であり、とくにスコフィールドはイルミナティとの関係があったことが明らかだ。
ディスペンセーショナリストの翻訳聖書である新改訳の制作には、ロックフェラーの資金援助があった。
ディスペンセーショナリストたちは、世界の支配の方法は、武力的制圧であると主張する。
彼らは、キリストが世界の終末時代に再臨し、エルサレムの神殿から世界を律法によって統治するという。そして、それがもうすぐ起きるという。
今の状態においてキリストが世界を統治するには、武力以外にはない。
なぜならば、世界のほとんどの人々は、クリスチャンではないからだ。
キリストを主と考えていない何十億人ものイスラム教徒やヒューマニスト、仏教徒を統治するには、強制以外にはない。
だから、ディスペンセーショナリストの福音派の教えにしたがえば、イラク戦争も「恵み」になるわけだ。
福音派の本流は、こんな異端思想ではない。
福音派の本流は、アウグスチヌスからカルヴァン、そして、ピューリタンを通して19世紀初頭までのキリスト教は、千年王国を教会時代とみなすポスト・ミレ思想であった。
それは、「キリストは、十字架・昇天において、世界の王となり、その王国は世界をすでに統治しており、その御国は歴史を通じて拡大しつつある」と説く。
そして、その拡大の方法は、伝道と教育である。武力ではない。
世界の人々が自発的にキリストの御国に従う過程で、神の国は拡大する、と。
だから、ポスト・ミレは強制的な支配を主張しない。
ブッシュ大統領は、今の教理的な誤謬をかかえた福音派の姿を世間に知らしめたという意味で大きな仕事をしたが、本来の福音派の姿を誤解して伝えたという意味で福音派キリスト教に大きなダメージを与えた。
悪魔の常套手段「悪事をなして責任を善人に押し付ける」を、この大統領見事にこなした。
そういう意味で彼は有能であった。
2008年12月6日
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