最近の東京地検の行動を見て
ホリエモンといい村上ファンドといい、どうも「正常な商業行為からの逸脱」を罰するというよりも、「マネーゲームに興ずる不真面目な連中を許さない」という政治的な意図から取り締まったとしか思えない。
たしかに、粉飾もインサイダーも悪いから、彼らの逮捕に反対はしない。
しかし、もし検察が「マネーゲームでもうける奴らが世間を闊歩し、まじめに働く人々が小さくなっている。こんな馬鹿なことがあってよいのか。」という倫理観を持ってやっているとしたら、ゆゆしき問題だ。
もし「金儲け」が悪ならば、日本を社会主義国にせよ。商品を配給制にせよ。
「株取引で巨額の金を儲けること」が悪であるならば、株式市場を閉鎖せよ。
人体に血液が必要なのと同じように、商品やサービスが社会に行き届くためには、「利ざや」を稼ごうとする商人の活躍がなければならない。
昔から商人の社会的地位は低い。
なぜならば、「何も作らず、右から左にものを流すだけ」だと見られたから。
実際に商売をやった人なら分かるだろうが、「右から左に流すこと」がどれだけ大変なことか!
商人は、商品知識を学ばねばならない。メーカーの専門職ほどではないにしても、かなりの知識がなければ、商品を扱うことは不可能である。
また、商品が必要とされている国や会社があったとしても、その国や会社に支払い能力がなければ売ることができない。代金回収を確実にするには、与信審査をしっかりとしなければならない。
商社は、メーカーに代わって情報収集、リスクの肩代わりなど様々な仕事をし、ものを実際に顧客に届けるために努力している。
ものを作らず、右から左に流す者を軽蔑するならば、ものは顧客に届かず、それゆえ、ものを作っても何もならない。
ソ連はそうやって破滅したのである。
「利ざや」を稼ぐことを軽蔑したら、社会は機能不全に陥る。
「金儲け」を否定したら、社会は立ち行かない。
今の東大卒のエリート公務員は、学校で社会主義教育を受けているため、「利ざや」とか「株取引による金儲け」を軽蔑する傾向があるのではないか。
もしそうなら、非常にゆゆしき問題である。
自分ではよいことをしていると思っているが、日本の市場を混乱させ、商業活動の足をひっぱり、実業において苦労している勤労者に迷惑をかけることになっているのではないか。
最近の東京地検の行動を見てそう思うのである。
2006年6月6日
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