正統的キリスト教に立たない社会は自滅する
社会・文明論的に見て、ニケア会議(325年)とカルケドン会議(451年)は重要である。
(1)
ニケア会議において三位一神教が確立された。
父、子、聖霊の三位は、別々の人格であるが、契約によって統一され一人の神である。
存在論的に「多」であるが、契約的には「一」である。
万物は神より出ているので、万物にもこの性質がある。
たとえば、会社は法人として一人のようにふるまうが、多数の人々から成る。
神において、多も究極であり、一も究極である。
どちらかが優越しているというわけではない。
だから、神のご性質を啓示するために創造された万物においても、多も一も究極であり、いずれかが優越するということはない。
これが、聖書的社会の基本である。
一位一神教の場合、「一」だけが尊く、「多」は劣った状態である。だから、多は一に向かうようにプレッシャーをかけられる。
多神教の場合、それと逆であり、一は多に向かうようにプレッシャーをかけられる。
「多神教は寛容だが、一神教は不寛容」というような妄想がはびこっている。
多様性が究極のシステムでは、統一はあるべき姿ではない。しかし、システムが成立するには統一はどうしても避けられない。
その場合、多様性は「本来は多様であるべきなんだが、統一はしかたがない」として切り捨てられる。
客観的・普遍的道徳を否定した共産主義社会では、統一が強制された。
「神はいない。だからわれわれは何をしてもいい」と叫んだ人々は、すぐに国家権力の取り締まりに怯えるようになった。
各人が道徳を否定したら、国家としての秩序が維持できないので、権力による暴力的支配が必要になった。
自由と秩序が並立する社会を作るには、三位一神を信じる以外にはない。
(2)
カルケドン会議では、キリストの二性一人格が確立された。
すなわち、キリストは神であると同時に人間であるという教義が確立された。
キリストは神であるが、人間ではない、とする教えが間違っているのは、「アダムが破った契約を代わりに成就する」者がいなくなるからである。
キリストは、神と人間が結んだ契約をアダムの代わりに成就するために受肉された。
本来は、アダムが神の法をすべて守って、永遠の命を獲得し、世界を永遠に所有しなければならなかった。
アダムは、神の創造を完成させる使命があった。
神は六日で舞台を設営された。
人間は、その舞台の上で自分の役割をはたし、神的文明を築き、神の創造を完成させなければならなかった。
しかし、アダムがサタンの誘惑に負けて、失敗したので、代わりにその使命を成就する「人」が必要になった。
キリストが神のままであったならば、誰も契約を成就できず、それゆえ人間には救いはまったくなかった。
われわれは、キリストと契約を結び(クリスチャンになり)、キリストの体である教会に加わることによって、キリストの功徳を自分のものとすることができる。
われわれは生まれながらにアダム族であり、失敗者の子孫である。
しかし、契約によってキリスト族になれば、成功者であるキリストの子孫となることができ、キリストが行われた次の業を自分のものとできる。
(1)刑罰を受けること。
(2)永遠の命と資産を受け取ること。
キリストを信じるならば、われわれは、自分もキリストとともに十字架において処刑されたと神によってみなされる。
それだけではなく、キリストがすべての神の法を守ることによって得られた永遠の命と世界の所有の権利を自分のものにできる。
われわれがこれらの特権に与るには、どうしてもキリストは人でなければならない。
キリストは人間であると同時に神であられる。
もし神ではなく、単なる人間でしかなければ、キリストの命の値は一人分である。
多くの人の身代わりになることはできない。
仮に罪をまったく犯したことのない人が、誰かの身代わりとして死んでくれたとしても、その命はその人一人分でしかない。
無数の人々の罪を背負うことは人間にはできない。
キリストには神と人間の二性があり、それが別の存在ではなく、キリストお一人のうちに存在する。
この教義が確立されたことにより、国家や皇帝などの神格化が回避される。
キリスト以外の「神人」は存在せず、それゆえ、ローマにおける皇帝崇拝などのようなものは否定される。
現人神はキリスト以外にはいない。
被造物の神格化が防がれた結果、皇帝であれ、教皇であれ、政府であれ、誰もが「法の下」に置かれることになった。
正統的キリスト教のもとにおいて、法を超越した人間の出現は防止され、独裁や専制が否定される。
現在、日本において「官僚無謬説」なるものがまかり通っているのは、カルケドン会議の成果が適用されていないからである。
現代人は、神からの自由を獲得した結果、人間の奴隷になった。
正統的なキリスト教に帰る以外に、独裁を排除することはできない。
2013年11月24日
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