聖書信仰とアメリカ史 by R・J・ラッシュドゥーニー


合衆国の現状を理解するには、カルヴァン主義の信仰の衰退について考えなければならない。独立戦争は、ピューリタンの後千年王国説の勝利であったが、その衰退の大きな要因でもあった。ピューリタンの信仰は、2つの点において被害を受けた。第一、戦争とピューリタン主義、とくにスコットランド・アイルランドの長老派と密接に関係していると考えられたため、どの教会に属していてもすべてのピューリタンの牧師たちが、チャップレンとして熱心に活動した。これは教会にとって大きな損失であった。第二、さらに重要なことに、彼らの教会の多くがイギリス軍により破壊され、計画的に焼き払われた。それは、すでに貧困に落ちていた人々にとって甚大かつ壊滅的な打撃であった。

ピューリタン主義がこの損失から完全に回復することはなかった。平和の時代には人々にとって権威であったピューリタン主義は、戦争を通じて悲劇的な損失と解体に見舞われた。

アウグスチヌス的な神の命令に対する信仰が衰退すると同時に、アウグスチヌス的な絶望が支配した。キリストの御国が勝利するとの希望が失われ、「キリストではなく、人間、不信仰な人が諸国民を指導する」という新しい信仰が現れた。それは、フランス革命によって強化された。結局「教会はこの世における唯一の希望であり、クリスチャンが引き籠るべき修道院でなければならない」との教えがアメリカを支配した。リバイバル運動は、この教えの成果である。

リバイバル運動の鞭

[18世紀の]リバイバル運動とともに、劇的な変化が起きた。人々がキリスト教から迷い出るのを見たアレグザンダー・ハミルトンは生前、「キリスト教憲法党」という名の新しい政党を作る計画を立てていた。修道院的精神によれば、そのような考えはあり得ないことであった。政治は政治家に委ねられた。クリスチャンは政治体制の世俗化に熱中した。選挙に関する説教や、政府に対するピューリタンの関心はもはや時代遅れの代物になり、世的であることの証拠とすら見られるようになった。「世的であること(worldliness)」という言葉そのものが、修道院的な意味を帯びるようになった。単に世に対する不信仰な関心という意味だけではなく、世に対するあらゆる純粋な関心すらも「世的」と評価されるようになった。

教育において、同様かつ広範囲の変化が起きた。かつて、すべての教育はキリスト教教育であった。クリスチャンスクールとクリスチャン大学しか存在しなかった。リバイバル運動の開始後数年以内に、国家による教育の管理が始まっていた。リバイバリストの中には、クリスチャンスクールを不信仰であると糾弾する者もいた。「クリスチャンスクールでは『リバイバルの経験よりも知識を、再生の体験よりも教育を』と考えられている」と。「雑多な聖書の知識がないほうが、回心の体験はもっとクリアになるだろう」と。チャールズ・G・フィニーのリバイバル運動では「リバイバル集会における聖書朗読は、聴衆の燃え上がった心に冷水を浴びせる効果がある」と考えられていた。

キーワードは、魂の救いであった。しかしこれがすべてではない。リバイバリストは「私が来る前には、魂の救いはほとんどなかった。私の前にいた人々は、牧師でも牧者でもなく、狼であった」と言わんばかりの振る舞いをした。さらに、「魂の救い」という言葉そのものに新しい定義が与えられた。聖書における「魂」は、人の生命を意味するので、聖書的な「魂の救い」とは人の生活全般と存在全般とかかわりがあり、それゆえ「魂の救い」は全人的な再生を意味する。しかし、今や、「救い」は人のある一面―つまり、魂または霊魂―に限定され、本来全体的及び宇宙的な意味を持つはずの「救い」も内面のそれに限られるようになった。

その結果、クリスチャンは、世界や人間の全生活から退き、この再定義された魂の世界に引き籠るようになった。救い主としてのイエス・キリストの働きは、もっぱら魂の救いに限定されるようになった。驚くなかれ、19世紀にカール・マッキンタイア牧師は文化命令を否定し、ボブ・ジョーンズ大学は「前千年王国説的王国が到来しない限り、イエスは主ではない」とすら主張した。アルミニウス主義の立場をとれば、キリストの王性を否定し、その働きを「救い主」としてのそれに限るようになることは、起こるべくして起きた現象といえるだろう。主権者の恵みを否定したために、この役割も矮小化された。実質的に、人間が救い主になった。キリストを選び、拒否するのは人間であり、決定し、命令を与えるのは人間であると。予定の主体は、神から人間に移った。

(『カルケドンレポート』2001年12月号 This translation was made by the permission of Chalcedon Foundation.)

 

 

2015年5月8日



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