日本側の外交努力を無視したルーズベルト2
日本側の提案は、甲乙あった。
それは、以下のとおり。
大幅な譲歩である。
これに対してハル・ノートは、全面否定するものであり、喧嘩を売っているとしか考えられない。
Proposal A:
九月二十五日我方提案を左の通り緩和す
一、通商無差別問題
九月二十五日案にて到底妥結の見込なき際は「日本国政府は無差別原則が全世界に適用せらるるものなるに於ては太平洋全地域即ち支那に於ても本原則の行わるることを承認す」と修正す
二、三国条約の解釈及履行問題
我方に於て自衛権の解釈を濫に拡大する意図なきことを更に明瞭にすると共に三国条約の解釈及履行に関しては我方は従来屡々説明せる如く帝国政府の自ら決定する所に依りて行動する次第にして此点は既に米国側の了承を得たるものなりと思考する旨を以て応酬す
三、撤兵問題
本件は左記の通り緩和す
A 支那に於ける駐兵及撤兵
支那事変の為支那に派遣せられたる日本国軍隊は北支及蒙彊の一定地域及海南島に関しては日支間平和成立後所要期間駐屯すべく爾余の軍隊は平和成立と同時に日支間に別に定めらるる所に従い撤去を開始し治安確立と共に二年以内に之を完了すべし
(註)所要期間に付米側より質問ありたる場合は概ね二十五年を目途とするものなる旨を以て応酬するものとす
B 仏印に於ける駐兵及撤兵
日本国政府は仏領印度支那の領土主権を尊重す 現に仏領印度支那に派遣せられ居る日本国軍隊は支那事変にして解決するか又は公正なる極東平和の確立するに於ては直に之を撤去すべし
尚四原則に付ては之を日米間の正式妥結事項(了解案たると又は其他の声明たるとを問わず)中に包含せしむることは極力回避するものとす
Proposal B:
一、日米両国は孰れも仏印以外の南東亜細亜及南太平洋地域に武力的進出を行わざることを確約す
二、日米両国政府は蘭領印度に於て其の必要とする物資の獲得が保障せらるる様相互に協力するものとす
三、日米両国政府は相互に通商関係を資産凍結前の状態に復帰すべし 米国は所要の石油の対日供給を約す
四、米国政府は日支両国の和平に関する努力に支障を与うるが如き行動に出でざるべし
備考
一、必要に応じ本取極成立せば南部仏印駐屯中の日本軍は北部仏印に移駐するの用意あること並に日支間和平成立するか又は太平洋地域に於ける公正なる平和確立する上は前記日本軍隊を撤退すべき旨を約束し差支なし
二、必要に応じては甲案中に包含せらるる通商無差別待遇に関する規定及三国条約の解釈及履行に関する規定を追加挿入するものとす
Source: 重光葵『昭和の動乱(下)』(中公文庫、2001)
2014年11月30日
ホーム