敵の攻撃は激しい


西洋思想の中核は、ヘレニズムとヘブライズムとゲルマニズムである。

とくに前者2つが重要である。

ヘレニズムとはギリシア思想。

ヘブライズムとはユダヤ思想。

西洋は、ギリシアとユダヤの2つの大きな柱から成り立っている。

ヘブライズムを導入したのは主にキリスト教である。

キリスト教とギリシア思想が合体したときに、西洋の大黒柱ができた。

キリスト教を担う主体が徐々にユダヤ人から異邦人に移っていくにつれて、ヘレニズムの比重が大きくなった。

その比重が最大になったのがトマス・アキナスである。

トマス・アキナスは、実質的にヘレニズムの枠組みの中にヘブライズムを組み込んだ。

ヘレニズムが主体でヘブライズムが形式だけになった。

日本に入ったものがすべて日本化されるのと似ている。

仏教だってキリスト教だって日本に入ると、日本精神の体系の中に組み込まれ変質する。

神学校に入ると、その神学校のシステムが主体で、キリスト教の倫理は下位に位置づけられる。

教団組織を維持するために、キリストの言葉が無視され、聖書を重視する人々が次第に追い出される。

こういうような現象がギリシアと聖書との間にもあった。

それが、トマス・アキナスのもとで体系化されたローマ・カトリックの神学である。

しかし、ヘブライズムが下位に属し、ヘレニズムが上位に置かれると、当然のことだが堕落が始まる。

「免罪符を買えば天国に行ける」というような金銭主義が起き、キリスト教はマモン神によって換骨奪胎された。

神は、このようなキリスト教を処罰された。

それが、ルターの宗教改革である。

ルターは、過渡期の人間であり、半カトリック、半聖書的であった。

本当にキリスト教の回復が起きたのがカルヴァンである。

「聖書に帰れ」との運動が本格的に起きた。

ジャン・カルヴァンという天才によって、聖書信仰は回復された。

それと同時に、ヘレニズム側も先鋭化した。

カルヴァンによって神の法が回復されたのと対照的に、ヘレニズムが徹底化され自然法、自然理性が純粋化した。

それが、ローマ・カトリック側の反宗教改革という形で現れた。

つまり、16世紀は、「麦と毒麦が姿をはっきり現した」時代なのである。

ヘレニズムの本質は、「自然は究極である」である。

世界はもともと自然法があり、自然秩序があったと。

ヘブライズムの本質は、「神は究極である」である。

世界は無から創造され、世界の創造前に神しかおられなかったと。

ローマ・カトリックにおいて、「聖書の神の創造とは、はじめから存在した自然秩序に追加されたものである」と考えられた。

だから、神の法は、自然法の下位に位置づけられた。

宗教改革において、神の法が究極に位置づけられた。

しかし、宗教改革の中に異物が混入することになる。

それが、アルミニウス主義である。

自然理性の半独立を宣言した。

宗教改革は、敵がまき散らした異物によって変質し、ついにリベラルやバルトなどの自然主義が主流化した。

それが19世紀から20世紀にかけての宗教改革陣営の堕落である。

しかし、神は、その間も純粋な流れを残しておかれた。

宗教改革を忠実に継承する流れは主にアメリカピューリタンとオランダで続いた。

オランダでは、アブラハム・カイパーからドーイウェールトへと。

アメリカでは、ゲルハルダス・ヴォス、グレシャム・メイチェンからヴァン・ティルへと。

ただし、オランダの流れは、ドーイウェールトが自然主義に戻ったので途切れた。

ドーイウェールトは、神の法に忠実ではなかった。

真のヘブライズムは、ヴァン・ティルだけになった。

ヴァン・ティルを継承したのは、グレッグ・バーンセンとR・J・ラッシュドゥーニーである。

そして、ヴァン・ティルがあいまいにした神の法をこの2人が徹底化した。

聖書信仰は、この2人によって維持された。

私は、たまたまアメリカの長老派教会を訪れたときに、R・J・ラッシュドゥーニーの主要著書2冊The Institutes of Biblical Law と Law and Societyを購入した。

神学校に入学するときに、ある牧師からTheonomy in Christian Ethicsをプレゼントされた。これは、グレッグ・バーンセンの主要著書である。

それが再建主義の主要著書であると知らずに、卒業のときに卒論を書くために読んだ。

神は、私を聖書信仰の流れの中に置いてくださった。

これは、完全に神の恵みである。

私は大学時代にすでにヴァン・ティルだけが聖書信仰の最後の流れであると気づいていた。

ヴァン・ティルの次を探していた。

それが、偶然にも、アメリカの長老派の教会において、そして、牧師のプレゼントによって発見した。

そのプレゼントしてくれた牧師自身は、セオノミーを受け入れていない。

だから完全に偶然、つまり、神の導きなのである。

ヘブライズムの流れは、今日本においてこのように継承された。

さて、ヘレニズムの流れは、反宗教改革からどのように続いたのであろうか。

それは、イルミナティである。

そもそも反宗教改革を担ったイエズス会が、グノーシスの流れに属していたのである。イエズス会の創始者イグナチウス・デ・ロヨラは、グノーシスの秘密結社アランブラドスに属していた。アランブラドスは、英語に直すとイルミナティである。

グノーシスは、ヘレニズムの中心的な流れである。

それが、イルミナティに継承され、そして、ついにロスチャイルドを通じて世界の政治経済文化あらゆるものを飲み込んだ。

宗教改革陣営も全部飲み込まれた。

残ったのは、われわれとアメリカの再建主義者だけである。

他の国々における再建主義運動がどうなっているかはわからない。

アメリカでも、ラッシュドゥーニーが亡くなってから、オーバン・アヴェニュー(フェデラル・ヴィジョン)神学やフルプレテリズムなどが現れて、再建主義が変質した。

信頼できるのは、ゲイリー・ノース以外に見当たらない。グレッグ・バーンセンは亡くなったし、ジェームズ・ジョーダンやその流れに属する日本の福音総合研究所は、ラッシュドゥーニーの流れから離れてフェデラル・ヴィジョンになった。

ゲイリー・ノースも、最近、陰謀否定に回ってしまったので、イルミナティを堂々と批判する立場にはない。

問題を明確にとらえているのは、われわれだけになった。

それだけ、ヘレニズムの影響は強く、浸透力はものすごい。

かつてカルケドンレポートに投稿していた再建主義シンパの福音派の人々も、宗教右派の立場から、統一教会の政治団体などで講演を行っている。

セオノミーの論客ハーバート・タイタスは、ラッシュドゥーニーと同じく、アメリカ合衆国の起源がフリーメイソンにあるとの理解がない。

アメリカ合衆国がキリスト教国であると信じているため、非現実的である。

アメリカ合衆国は、フランシス・ベーコンの理想アトランティスを実現させるために作られた人工国家であり、世界をキリスト教以前の世界にしようとするフリーメイソン・イルミナティの流れに属すると理解していない。

だから、ここでもヘレニズムの浸食を受けていると考えて間違いはないだろう。

ヘブライズムを純粋に維持するためには、神の法、セオノミーを明確に保ち、妥協しないことである。

聖書を究極の権威とし、前提とし、疑わない、という立場を崩せば、すぐにヘレニズム側に巻き込まれて世界統一政府の中に組み込まれるだろう。

それぐらい敵の攻撃は激しいのである。

 

 

2014年4月11日



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