「基軸通貨」としてのドルの役割が終焉
米経済はメタボ…浜矩子氏「1ドル=50円時代は近い」 - Infoseek ニュース
http://news.www.infoseek.co.jp/topics/business/n_kawase__...
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
急激な円高は一服しているが、安心するのはまだ早い。「1ドル=50円まで進む可能性がある」と警告するのは同志社大大学院の浜矩子教授(58)だ。国際的な決済に使われる「基軸通貨」としてのドルの役割が終焉するのは避けられず、9月に実施した日本の為替介入は「ヤブ医者の処方せんで副作用も大きい」と批判する。
歴史的な観点から為替を分析する浜教授は、このところの円安ドル高の動きについて「ドル高が修正される歴史的な流れのなかで1つの踊り場にすぎない」と指摘。中長期的には、円高ドル安の流れは止められないとみている。
戦後の為替相場は1ドル=360円の固定レートでスタート。1971年8月にニクソン米大統領が金とドルの交換停止を宣言した「ニクソン・ショック」をへて、ドルが切り下げられ1ドル=308円に。73年の変動相場制移行後はさらに円高が進み、95年4月19日には戦後最高値の1ドル=79円75銭をつけた。
総じてドル安(円高)方向に進んでいるが、浜教授は「ニクソン・ショック以後、ドルは実質的に基軸通貨としての力を失っていたにもかかわらず、各国政府が外貨準備などで保有しているドルの価値が減少するのを恐れたこともあって、“裸の王様”であり続けた」としている。
とどめとなったのが、2008年9月のリーマン・ショック。08年10月以降、1ドル=90円〜100円近辺で推移していたが、今年7月に85円、8月に83円、9月に82円台と円高が加速。そして11月に80円20銭台まで上昇した。
「米国は財政支出や金融緩和などで人為的に経済を回復させようとしたが、立ち直りに失敗し、さらにドルの価値を減らす悪循環になっている。見て見ぬふりをしていた各国も、危なくてドルを持っていられないと考えるようになり、ドル安は最終局面を迎えている」(浜教授)
ドル安が進む背景には米国経済が抱える問題があるという。
「民間も政府も借金をしないと経済が回せないのが米国経済で、その結果が経常収支と財政収支の『双子の赤字』。今後肥大化してメタボ状態の米国経済の規模が半分程度となり、1ドル=90円〜100円で推移してきた為替も半分の45〜50円になるのは避けられないのでは」とみる。
一方、ドル売りの受け皿として買われているのが日本の円だ。が、日本の輸出産業にとっては収益を目減りさせるほか、内需産業も割安な輸入品に押されるなどショックが大きい。
そこで政府・日銀は9月15日、過去最大規模となる2兆1249億円の円売りドル買い介入を実施したが、浜教授は「歴史的なドル安の流れに日本だけが逆らっても徒労でしかない。まるでヤブ医者の処方せんだ」とバッサリ。
介入直後こそ82円台から85円台まで円安に振れたものの、1週間ほどで元に戻ってしまった。しかも介入は効き目がないだけでなく、副作用があるという。
「介入は“麻薬”のようなもので、一度使うとやめられず、2兆円の次は4兆円といった具合に量も増えてゆく。さらに深刻なのは、介入で日本政府がため込んだドルが今後ドル安が進めば大きな含み損を抱えることになる」(浜教授)
1ドル=80円でも青息吐息の日本経済が、50円ともなれば壊滅してしまいそうだが、浜教授はこんな見方を示す。
「あす50円になるなら大変な打撃になるが、まだ数年の時間はあるだろう。その間に、企業側の新たな生産・輸出体制や政府の新たな通貨体制構築など、手を打つことは可能だ。そもそも1ドル=50円になってドルが基軸通貨の座を失ったら決済に使われなくなるので、レートを気にしなくてもよくなる」
そうなったとして、ドルに代わる基軸通貨はあるのだろうか。浜教授は「基軸通貨は一国が突出して強い場合に成り立つので、ユーロも人民元も無理だろう。複数の決済通貨が共存する“通貨無極化時代”が到来するのではないか」とみる。
■はま・のりこ 1952年8月生まれ。一橋大経済学部卒。三菱総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)ロンドン駐在員事務所長、経済調査部長、政策経済研究センター主席研究員をへて、2002年10月から同志社大大学院ビジネス研究科教授。専門は国際経済学、国際金融論、欧州経済論。主な著書に『グローバル恐慌〜金融暴走時代の果てに〜』『ユニクロ型デフレと国家破産』など。金融審議会、産業構造審議会などの委員を歴任。
[ 2010年11月15日17時00分 ]
2010年11月16日
ホーム ツイート