ISD条項は公的医療に適用されない?


ラジオで、経済評論家の高橋洋一氏がTPPの中身について「ISD条項は公的医療に適用されない」との但し書きがあると言っていた。

この情報が正しければ、国民皆保険は維持される。

そう願いたいものである。

しかし、ISD条項は、日本国の主権を他国の企業に明け渡すことなので反対である。


「国の主権を損なうようなISD条項は合意しない」(*1)
 これが2012年末の総選挙での自民党の公約であった。国内規制を無効化して外資に売り渡す、非関税障壁(国内規制)の撤廃にこそ問題の本質が有る事を自民党は承知していた。
 ところが今、安倍首相は、これを関税の問題にすり替えて、この美しき日本という国を外資の餌食として差し出そうとしている。
 ISD条項とは何か。単純化して言えば、貿易協定の中で、外国投資家と国家の紛争をどう解決するか(Investment State Dispute Settlement)について定める条文のことだ(ISDS条項とも呼ばれる)。ある国が貿易協定の投資に関する規定に反して自国の法律の制定・改正や規制を設けるなどして、その国に投資していた外国企業が損害を被った場合、その企業が相手国に対して国際裁判を起こし、賠償を求めることができるようにするものだ。
 TPPでもこのISD条項が結ばれる可能性が非常に高い。TPPに先行して2012年に結ばれた米韓FTA(自由貿易協定)にもこの条項が含まれている。
 国際裁判という響きには何か公正中立なニュアンスがある。国境を超えた投資が増えたこの時代に、そうした仲裁システムは合理的かつ必要であると思われるかもしれない。
 しかし、そもそも外国投資家は違法に権利が侵害されたというのであれば、相手国の裁判所で争って救済を得ることや損害賠償を受けることもできる。日本であれば、裁判を受ける権利には法の下の平等の原則がおよぶから、外国投資家だからといって、不利に扱ってよいということにはならない。外国投資家にも訴訟の機会は用意され、司法の判断も平等にくだされる。それにもかかわらず、否応なく日本政府を国際裁判に引っ張り出す権利を外国投資家に認めるのがISD条項だ。
 筆者はISD条項に関して、米韓FTAの交渉過程において韓国の法務省(=法務部)が検討した資料を入手し、その内容に驚愕した。彼らは非常な危機感をもってISD条項を分析していた。評価は後にまわすが、これを見れば、日本の憲法秩序が破壊される危険性が非常に高いことが十分にわかるはずだ。憲法学者はいい加減に事態を直視すべきだ。日本の法務省はいったい、何をしているのだろうか。日本弁護士連合会の執行部も早く動くべきではないのか。

(中野剛志編『TPP黒い条約』(集英社新書・2013年)97〜98ページ(文・岩月浩二))
http://www.amazon.co.jp/TPP-%E9%BB%92%E3%81%8…/…/ref=sr_1_1…

(*1「TPPについての考え方」
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/055.pdf


岩月浩二(いわつきこうじ)1955年、愛知県生まれ。「TPPを考える国民会議」世話人。愛知県弁護士会司法問題対策委員会TTP部会長・憲法委員会副委員長。1979年司法試験合格。翌年、東京大学法学部卒業。1992年守山法律事務所設立。2012年まで名古屋大学法科大学院非常勤講師。2013年2月、議員連盟「TTPを慎重に考える会」の勉強会に講師として招かれISD条項の危険性を訴え、注目を浴びる。(上書96ページの著者略歴全文)

 

 

2015年10月21日



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