プレ・ミレ終末論が生み出した『ノストラダムスの大予言』
五島勉著『ノストラダムスの大予言』は私の人生に大きな影響を与えた。
高校時代に読んで悲観主義に陥り、それ以来、未来を失った。
人生設計ができなくなったのだ。
「1999年7月に世界は破滅するのか。ならば何をやっても無駄だ」と。
自分が職について、家庭を持ち、子供を育てるというヴィジョンがまったく失われた。
大学時代に読んだハル・リンゼイの『地球最後の日』(いのちのことば社)もこの悲観主義を助長した。
社会的責任を自覚した大人になり、職能を高め、社会に出る準備をしようという気持ちにならなかった。
就職しても、「こんな会社勤めしても、世はまもなく終わり、反キリストが世界を牛耳ることになるのだから無意味だ。この終末を広く人々に伝えるほうがよい」と考えていた。
今から考えると愚かだが、しかし、当時は真剣だった。
買い物に行って帰る途中、「このまま携挙があって自分は帰宅しないかもしれない」と本気で思っていた。
われわれの世代の日本のクリスチャンは、大なり小なり五島勉の本著書の影響を受けていると思う。
まだきちんとした考え方が身についていないときに、このような本を読むことは有害である。
本気にするからだ。
長島一茂が2000年まで結婚しなかったのは、1999年7月に世界は終わると信じていたからだという。
五島勉の母親はクリスチャンであった。
”五島 それは、自分がクリスチャンの家に生まれて、母親からいろいろと聞かされてましたから。私の家のキリスト教は、ローマカトリックじゃなくてロシア正教です。ニコライ堂を建てたニコライ大主教が、明治時代、函館に上陸して布教を始めたとき、最初の信者の一人が私のおばあさんなんです。おばあさんは早くに死んじゃいましたけど、母に受け継がれた話の中に、黙示録や予言の話がありました。
―― たしかに多くの人が、1999年7月に全滅するんだと信じていましたね。
五島 ただ、私はそのことをちゃんと主張できるけど、当時の子どもたちがね。まさかこんなに子どもたちが読むとは思わなかった。なんと小学生まで読んで、そのまま信じ込んじゃった。ノイローゼになったり、やけっぱちになったりした人もいて、そんな手紙をもらったり、詰問されたりしたこともずいぶんありました。それは本当に申し訳ない。当時の子どもたちには謝りたい。”
2018年1月3日
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