政府による需要喚起は長期的に見ると解決にならない


三橋氏の数々の議論は非常に有益であり、今の日本にとって必要な人だと思う。

しかし、長期的に見るならば、危険な部分があると思う。

それは、前提が「はじめに中央銀行ありき」だからだ。

「政府が借金をしても、紙幣発行権があるから大丈夫。政府の借金は期限がないので、持越ししてもいい」というが、それは、政府が神になっていることで、非常に不健全だと思う。

今の状況で、デフレを放置すれば、失業者があふれ、自殺者もでるというのは正しい。

ただ、そのために政府が不換紙幣を発行して、無から有を作り、需要をつくり出すというのは、いかがなものか。

たとえば、ある会社が商品を作って、その需要が大きければ、その商品の価格は上がる。

長嶋選手のサイン入りのグローブは長嶋ファンにとっては値千金であろうが、私のような人間にとってみれば、普通のグローブの値しかない。

長嶋ファンがたくさんいれば、そのグローブの値段は上がるだろうが、そうでなければ普通の価格に落ち着く。

この市場が決める価格こそが、本当の価格だと思う。

それを意図的に吊り上げると、異常な世界になる。

たとえば、少女時代やKARAなどの韓流スターを盛り上げるために、韓国は政府ぐるみでユーチューブのカウントを吊り上げる工作を行ってきたという。

そんなことやっても、日本人にとって韓国ものがそれほど人気を博するとは思えないので、工作が終了したら、自然と人気がなくなってきている。

われわれは、この異常な盛り上げが収まった時点で、心の平静を取り戻し、普通の生活に戻れる。

しかし、あのフジテレビと韓国がグルになってやった工作活動の間は、気持ち悪くてしかたがなかった。チャンネルをひねると韓流ドラマばかり。

このように、人為的なものは異常をつくり出す。短期的ならばまだしも、長期的になると人々の精神を狂わす。

中央銀行による不換紙幣の発行や、ケインズ説の公共投資も、これと同じように人為的操作であり、商品に対する需要がないにもかかわらず、人為的に需要をつくり出すものである。

だから、いずれひずみが積もって、地震が起きる。それがバブル崩壊である。

中国は、最初から政府主導でバブルが作り出されたので、中国経済の本質はバブルである。

自前の技術がないのに、政府が様々な投資を行って需要を作り出してこれだけ膨らんだ。

だから、破裂したらもとの第3世界である。

私は、中央銀行に頼らない経済対策が必要だと思う。

長期的に見れば、中央銀行を廃止し、商品貨幣(金貨や銀貨など)を通貨として使用し、銀行紙幣は、必ず商品貨幣の裏打ちがあるものでなければならないとすべきだ。

政府は経済政策と称する「需要の意図的な拡大」をやめて、市場の需給関係で決定される物価を優先すべき。

さて、では、今の日本の不景気やデフレについてはどうだろうか。

私は、今の需要減退は、マスコミによる意図的な(もしくは無知による)日本衰退論による社会不安によって起きていると思う。

だから、インターネットによって、マスコミによる情報の独占状態の緩和が進んでいる現在、市場はまともになりつつあると見てよいのではないかと思う。

なにしろ、日本は世界最強の経済を持ち、対外純資産世界第一位を20年間続けている。「失われた20年」は神話であり、一貫して円は高くなり、それに伴って日本人の資産は何倍にもなっている。

この事実を伝え、さらに、日本の社会保障は安定していることも伝えること。(私は、社会保障を国がやることに反対で、今の体制による次善の策として受け入れている。)

そうすれば、今の「過度の需要の減退による、過度の市場の縮小」は改善されるだろう。

「政府による需要喚起」をやめて、「マスコミによる風評被害からの解放」こそが基本的な解決だと思う。

 

 

2012年11月10日



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